日々是迷々之記
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久しぶりに美容院へ行くことにした。9月以来2ヶ月ぶりだ。病院から行くのでH神バスで向かった。ここ1週間ほど、高速道路のリフレッシュ工事をしているので、道路は阿鼻叫喚の渋滞が続いている。
片側1.5車線の道路でバス停に停車。すぐ前には2トンクラスのトラックが路上駐車、止まったバスの傍らを、クルマがびゅんびゅんとすり抜けて行く。正直言って、私はこういう状況が苦手だ。しかし、運転手さんはさすがプロだ。そこから乗り込んだおばあさんがちゃんと席に座ったのを確認して、その場で回転しているかのように鼻先をくるりとクルマの流れにつっこんで何もなかったように発車した。うむむ、すごい。
定刻より5分遅れで終点へ。そこからは歩いて5分ほどで美容院だ。ここ5,6年同じ美容師さんに切ってもらっている。最近はほとんどお任せ状態である。今日は、前髪は作らないで、だいたい現状維持。傷んだ部分は切って下さい。とお願いした。
ここは美容院自体はかなりオシャレなのだが、場所が大阪の下町にあるので客層がかなり独特だと思う。わたしの隣は水商売系の若いおにいさん、その向こうはベリーショートで赤ムラサキに染めているおばちゃんとおばあさんの中間の人。みんな常連さんのようで楽しく語らっている。
気がつくとカットは終わりにさしかかっていた。足下には毛の固まりが大量にある。鏡を見ながら後ろ髪を指で梳くとするっと抜けてしまう。毛の厚みが違うのだ。でも、合わせ鏡で後頭部を見てみると、全体の長さはほとんど変わっていない。すごい減らしのテクニックなのだ。
帰りは夕焼けを見ながら歩いてターミナル駅へ。そこからバスに乗った。今度は市営バスだが、大阪の大動脈を南下する、しかも5時過ぎた所という、自分だったら絶対運転せーへんわというシチュエーションだ。
案の定、ロータリーから出ることもままならない。少しでも前に出ようとバス専用路に入ってくるバイクや車がびゅんびゅんやってくるのだ。そこでも運転手さんはさっと鼻先を突っ込み、加速をし素早く3レーン向こうの右折専用車線に入る。その間、一切おっとっととなるような揺れはなかった。
右折して10分ほどで、また右折だ。ここは、南向き一方通行で6車線あり、バスはバス停があるので一番左の車線にいる。どうやって右折するのかハラハラした。交差点を越えたところで停車し、交差する道路が青になった瞬間、時計回りに90度回転して右折するのだ。その間、一切揺れもない。本来の車線にいた車のジャマになることもなく、何もなかったかのようにバスは走って行く。車内のことにも気を配り、ちゃんと降りる人がいなくなったのをアナウンスで確認してから出発する。降りるときには「ありがとうございました。」の一言。わたしも会釈してから下車した。
何も主張せず、自分の技術を持って静かにやるべきことをやってゆく、そういう姿勢を持った人はやはりかっこいいなぁと思ってしまった。技術に裏付けられた自信、そして仕事。そういう揺らぎなさを持つことが私の憧れだ。
ちょっと何かに憧れるには年を取りすぎたかなという感はあるが…。
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