日々是迷々之記
目次


2004年10月27日(水) ゆずとパイナップル

会社帰りに閉店間際の八百屋兼雑貨屋の前を通りかかった。「ゆず2個100円」とのこと。私は自転車を降り、そのゆずを買った。ほんの少し肌寒い中で、ゆずは冬のにおいがした。

そこから自転車を漕ぎつづけ、家の近所のスーパーに寄った。黒酢を切らしていたのだ。果物売り場で傷がほんの少し付いたりんごを見つけたのでかごに入れた。その傍らでそのスーパーの黄色の値引きシールが貼られたものが目に入る。

パイナップルである。半分で150円のものが100円だった。熟れていて食べ頃のそれは、ねっとりと甘い香りがした。

わたしはうーんと考えた。ぼちぼち冬である。練り物売り場にはおでんの材料が並んでいる。さっきゆずを買った。なのに、パイナップルが食べ頃なんである。しかも100円。あの造形で、とても重い。それが100円なのにいい匂いなんである。きょうびスナック菓子でも100円以上することを考えると、パイナップルというのはとても安すぎる気がする。

私はそのパイナップルをかごに入れた。そして傍らのモンキーバナナも買った。黒酢、豆乳も買ったが、どれもおかずにならないものばかりだ。

スーパーから家まで自転車で10分弱。ライトを付けているのでびゅーびゅーとタイヤをうならせながら自転車を漕ぎ、考えた。新潟県では被災者のひとたちが、ガソリンがなくなることを恐れて、エアコンを停めた車で寝起きしている。なのに、ほんの数百キロ離れた大阪では、晩秋にパイナップルやバナナをおいしく食べている。

日本の豊かさはなんか微妙だ。地震も戦争も台風もテレビの中の出来事みたいで、宇宙人が襲来しても「ふーん」とか言って、リモコンのテレビ電源ボタンを押せばなかったこと、みたいになってしまいそうだ。

もし、私がちゃんとバイクに乗れていれば、大型のオフロードバイクを駆ってヘリコプターが降りることができない集落に今もとどまっている人たちに何か必要なものを運びに行きたいと思う。二人乗りが怖くない人なら、二人乗りをしてそこから救出することすら可能かもしれない。究極の実用車としてのバイクとはそういうものだと感じる。

まぁ、ちょっと肌寒くなっただけで階段でつまずくような体の動かなさでは、そんなこと夢のまた夢なんだろうけれど。ゆずとパイナップルがテーブルの上でそれぞれいい匂いをさせる中でテレビの報道番組を見ながらそんなことを考えた。


nao-zo |MAIL

My追加