***
「もし、君が死んで幽霊になったら」
僕の言葉遊びのような、もしも話をしてみる。 現実味なんて必要ない。 ただ、君に話してみたいだけだった。
あはは、と軽く笑ってから、ぽつりと
「逢いに行くよ」
と、言ってくれた。
そしたら、と僕が言葉を続けた。
「そしたら、付き合ってね」
意外にもすんなりと出た言葉に驚いた。 君も、一瞬目を丸くしたけれど、またさっきのようにあはは、と軽く、でも少しやわらかく笑ってから、答えてくれた。
「うん、いいよ」
さわり、と風が吹く。
「ねえ」
じゃあ、と君が口をあけた。
僕は、自然と自分の神経が、その言葉一つ一つに向いていくのがわかった。
「じゃあ、君が死んだら?」
月明かりにぼんやり浮かぶ君の表情が、何だかひどく幻想的だった。
「僕が死んだら―」
― 逢いに行ってもいい?
そう、ぽつりと呟く。
― いいですよ
また静かに吹いた風の中で、その一言が聞こえた。
きっと、君はふんわりと微笑んでくれているんだろう。 僕と同じ方を向きながら。
「じゃあ、逢いに行くよ」
木々の葉が擦れ合う音が、遠くに聞こえる。
時間の観念がなくなるような心地良い空間だった。
「そっか」
また呟くように君が話す。
「じゃあ、その時は」
― 笑いながら泣いてあげる。
じん、と、何処かが一瞬熱くなった様な気がした。
風に揺れて、静かな木々のさざめきが近づいてくる。
その時は−−−
いつ、訪れるのだろう。
「ありがとう」
ぽつり、と出た言葉は、やはり酷く自然に生まれた。 僕の中でいつまでも残り続ける気がする。
― 真夏の夜の出来事。
***
どこの誰だったっけな―
そう貴方がこぼした一言は、多分面白いお話の合図なんだと 自然に身を乗り出している自分に気づいて、少し笑ってしまった。
独特の引き込まれる雰囲気が、心地良い。
「― 何処かのある学者がね、試しに現在というものがどのくらいの長さなのか計算したんだってさ。それによると、現在とは平均して八秒程度の長さで、八秒が過ぎれば次から次へと過去の記憶になって、人間の魂を流れていく・・・」
だから、過去の記憶っていうものは、 人間も神も手が及ばないところにあるんだってさ。
そう言ってグラスに口をつける横顔を見つめ、その向こうへと視線を送る。
蓄積されていく過去。 それは次々と増えていく度に、上書きや省略処理を繰り返されて、脳に保存されていく。
あたしの脳には、一体どれだけの過去が、どれだけ正確に残されているのだろう。
人間は自分の記憶を様々に形を変えてしまう。
どんなに大切だと思っていても、あれは何処で、いつの出来事だったのか― いつまであたしは、正確に持ち続けていられるのだろうか。
― 八秒の現在 (with 眠れる森)
***
あふぁ・・・短編。。。?? てかテストが・・・ぶるぶる
長期休み入ったらちゃんとHPとか改造したいな・・・作りなおすべ。まぢ。
|