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しく・・・しく・・・
何処かで胸の軋む音が聞こえるのは 僕のせい、じゃあない。
この間読んだ文章に中てられて、 思い出す度に感情が反応するんだ。
困り者な、僕の感受性。
こんなに過敏に反応するくせに、 ロマンチックの欠片もないなんて。
とことん、恋愛では使えない人間な気がする。
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もう、想い出になったはずだけれど 何度も何度も振り返って 涙を零している人間がいる。
同情、はしていない。 自分がそうなりたい、とも思わない。
ただ、その人が強く望むのであれば、 現実や、欲しているものを与えてみたいと思う。
仮に、その人が欲しているものを僕が持っていて 僕自身が、大して要らないものか、与えてもいいものであったら。
そんな傲慢な、考え。
でも、きっとこの人は 過去を振り返って その度に涙することを
楽しんでいるのかもしれない。
過去は、愛おしいと思うものであれば 時として美化されていく。
その甘美な想い出に浸って、 今は目の前にいない想い人の事を想像し 夢に囚われ続けるのだ。
それが、恋という名の額縁に収められている映像なら 尚の事、甘く苦い、どこか切ない香りなのだろう。
そして、きっとそれには中毒性が含まれていて―・・・
こんな風に、自分の感性が持ってきた悩みで悩んでいるのも、 いずれ思い出とかイイ経験だという類のタグを付けて 脳内に仕舞われる日が来るんだろう。
やっぱり、どこか冷めてしまっている僕ならば きっと、きっと。
誰かにとって、その命や人生をかけるほど大切なものであっても、 それが他の誰かにとってはゴミに等しいものであることもある。
きっと、僕は、 誰かにとって何にも勝る宝物を 平気な顔で壊したり、失くしたり 他人に譲ったり、捨ててしまったり 手放してしまったり、するのだろう。
そんな僕は そんな僕にとっては
何が、宝物なのだろう。
僕が欲しいものは、一体「何」で 僕が守りたいと、大切にしたいと想うものは 「何」なのだろう。
望んだものは、いつも手に入らない。
手に入ったことがない、訳ではないけれど、 僕には執着心が乏しい。
心から望んだものが手に入ったときの喜びを知っていても、 それが次の瞬間にゴミへと変わる、熱の冷める瞬間も知っている。
僕にとっては、そう、なのかもしれない。
まだ、まだ、 これから先何が起こりかわからない、けど。
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