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これは、報復なんだ。
ルールを破った二人への報復なんだ。
アノヒトは、いずれあたしに会うこともできなくなるし、 これから、落ち着く先を探すために苦労を強いられるのだろう。
あたしは、苦悩するんだ。 自分の迂闊さや、拭えない過去を作ったこと、 これから先、知らないうちに苦労するであろう人たちやアノヒトの姿、 そして、大切にすべきだった人が苦しんだ姿を見て、 色んな事を思い、考え、苦悩するんだ。
それが、報復。
誰かに助けを求めたくったって、頼れる人がいたとしても、 きっと、頼ったりなんかしてはいけないんだ。
悩んで、一人で考えなきゃいけない。
泣きそうになっても、きっとあたしは泣かないんだと思う。
苦しくて、誰かに吐き出したくても、 聞いてくれるであろう相手は思い浮かぶのに きっと、逢う時間を作ろうとすらしないかもしれない。
溜め込まないで、と
ある人が気付いた。
あたしの目は、そんなに余裕が無かっただろうか?
まずいな、とか、まだまだだなぁ。。。なんて 少し自嘲気味に笑ってみたりしても そうするしか出来なかった。
バカだなー。
頼れる誰かが居ると思うだけで、 こんなにも寄りかかりそうになる自分に 反吐が出そうになる。
甘くて、バカで。
いっそ、自分は一人だと思えてたなら もっとマシだったんじゃないかとさえ思う。
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傷、付けたのに。
大切にしなきゃいけないはずの人は、 傷つけられたのに
一人で立ってるんだと思うんじゃねぇぞ
なんて言ってきた。
ああ、判ってるよ。 結局、あたし一人で今日まで生きてこれるわけ無いんだ。
そう、思ったけど。
あたしの中には一欠けらでさえ存在しなかったかもしれない未来像を その人は思い描いて、具体的に考えていた。
それについて話し始めたときは、本当に驚いた。
そこまで考えていたことにも、口にしてきたことにも。
あたしはキミを傷つけたにも関わらず その一緒に居る未来を考えてるなんて。
キミの言う未来図を聞かされて
あたしは、自分のことしか考えていない人間だから、 あたしの思い描く未来には、キミはいないかもしれない。 自分の夢が叶うんだと思った時には、 キミの元を離れる事だって、簡単に選ぶかもしれないよ。
(簡単に、キミの事を裏切るかもしれないんだよ)
そう、伝えても。
その時はその時だよ。
だって、見返りなんて求めていないもの。 ただ、どうしたら一緒に居られるのかを考えてるんだ。
すごくすごく、変な気分で。 その瞬間に、やっぱりあたしの中には何かが欠如しているんだと その何かが何なのか、思い知らされた。
泣きそうで。 でも、堪えて。
キミは、どうするの。
キミにも夢はあるのに。 その夢は、あたしのものとは正反対で それを叶える為に選ぶ道は、きっと別離なのに。
キミが夢よりあたしを選ぶくらいなら、 その横っ面をぶん殴って、気持ちだけ受け取って さようなら と 言うつもりだったのに。
あたしは、キミの夢を潰したくなんか無い。 一緒に居ることでそうなるなら、あたしは離れる道を選ぶ。
自分の夢を、諦めたわけじゃないよ。 自分の夢を叶えるには、時間や経験が必要で、 総てをそろえて実行するのは、遠い未来だから、と
なら、あたしを支える道をまず選ぶんだ、と
そう言ってきて。
どうして、と その一言しか、頭には浮かばなくなってきた。
やっぱり、キミは あたしじゃないほうが良かったんじゃないかな。
嬉しくて、泣きそうで、
そのくせゴメンもアリガトウも すぐに言えなくて。
もっと、もっと その気持ちを汲んで
まるで鏡に映したみたいに、 素直に優しく キミを包んで支えてくれる人が
この世には居るはずなのに。
あたしじゃ、何の力にもなれなくて 自分のことしか考えてないから そんな風にキミのことを考えてだってあげられないかも知れないのに。
キミが想うほど あたしはキミを 想ってないかもしれないのに
何も、わからなくて 何度も何度も、考えるけど 結局答えは出なくて
あたしがどうしたいのかすら 分からなくなって来るんだ
ただ、一つだけ見えてる事だけを 考えていいのなら
楽だったのに
本当は、あたしも キミみたいに考えるはずなんだと思う
その気持ちがあれば
でも、先の未来なんて分からなくて
未来は自分が決めることであったとしても
それは自分のことであって、 そこには他人なんて居なかった。
他人の未来図なんて、 自分が関与や予想出来得るものでは 決して無いから。
だから、入れないようにしてたんだ。
今、キミを 誰かを、 大事にしよう、としか あたしにはきっと出来ないんだ。
仮に、その人の幸せな未来を考えたとき いつも、そこにはあたしは居ない。
あたしという存在は 決して他人の幸せと繋がってはいないんだと そう思ってるから
そう、思ってたから
キミの考え方や 口にする言葉が
脳に引っかかって、離れないことがある
何か、引っかかるんだ。
それは、あたしの中で欠如してるんだと思ってる 何か、の部分で
決して、一緒に居る意味が
愛とか恋とかでなくても
キミと居ると、 何か、引っかかるんだ。
まだ だから、まだ
この状態で居させて
きっと、キミは分かってる
あたしが一緒に居る理由が キミの望んでるものでないことも あたしとキミの、決定的な部分の価値観が違うことも
もしかしたら、あたしの中に欠如している「何か」も
でも、もう少し このままで居ようと思うんだ
結果、酷いことになるかもしれないけど
勝手でゴメン、かもしれないけど
もう少し、このままで
この、脳につっかえる何かが、気になって仕方ないんだ。
だから だから もう少し このままで。
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