*ちゃんちゃん ☆は「外法帖」のPLAY順は「陽→陰→邪」でした。ですからこのSSは、そういう話の展開が前提になっています。よもや「陽」ラストがあのような衝撃シーンだとは思わなくて、当時は「やめてくれええええっ!」と心の中で叫びまくってました。・・・それが、この物語を書くきっかけになっていると言っても過言ではないでしょう。 もしこれから「陰→陽→邪」でPLAYするとすれば、また違った話が思い付くのかもしれません。でもこの話は、どうやら天戒サン相手でないと出来ないと思います。 ・・・全くの余談ですが、今回魔人用語を登録していないPCで「外法帖」と入れようとしたところ、「下包丁」と言うおマヌケな変換をしてくれました。ああ・・・殺伐としているようなほのぼのしてるような・・・☆ ******************** 過ぎし夢 来たる朝(2)外法帖・天戒×女主? 明け方に見る夢は、正夢になるという・・・。 「悪夢・・・?」 「ええ。・・・天戒殿には確かに感謝してます。具合の悪いオレを気にかけてくださって、桔梗にも色々と言って下さってたみたいで。・・・だけど、所詮は夢の話ですから、オレ自身でさえどうしようもないんですよ。どうやら呪詛とか、そんな類のものでもなさそうですし」 「・・・呪詛されるような覚えでもあるのか? 龍斗」 「もののたとえですよ。まあ・・・オレの知らないところで、変な怨みぐらいは買ってるのかもしれないけど」 だから、もう気にしないで下さい───そう、言外に宣告しているのが分かるから、天戒の胸は痛む。 ───不意に思い出す記憶。 昨日、用があって桔梗を屋敷へ呼んだ時、たまたま龍斗は席を外していた。 それ故だろう。桔梗は声を潜めて天戒に報告したのである。 『あたしも昨夜、いえ、今朝方気がついたんですけどね。どうやら龍斗は夜な夜な、嫌な夢に魘されているらしいんですよ、天戒様』 女同士と言うことで、彼女と龍斗の寝室を同じ部屋にしておいたのだが、今回は功を奏したようだ。 『それもかなり悲惨な夢みたいで、今朝もそれであたしも目が覚めたほどなんです』 『・・・どのような夢なのか、分かるか?』 『断片的には。誰かに殺されそうになってるみたいことを、口走ってましたよ。�犹Δ垢福△笋瓩蹇∋Δ気覆い任�れ�瓠ΑΑΔ修Α�泣きながら叫んで。 ・・・あんな声、できたらもう、龍斗の口から聞きたくないですよ・・・』 確かに、龍斗が今し方見た夢がそれと同じなら、彼女が日に日にやつれて行く理由も分かる。悪夢の気配を少しでも拭い去りたいと、水を浴びに那智滝へ赴いたのも。 ───それなら尚更、捨て置くわけにはいかないではないか。 その思いが。 「じゃあ、これで失礼します」と立ち去ろうとする龍斗の腕を、思わず掴ませていたらしい。 「天戒殿?」 「まだ手は冷えているようだな。氷のようだ・・・これではなかなか眠れまい?」 多分龍斗は、嫌な夢を見るくらいならと、朝まで起きているつもりなのだろう。そうと気づいて天戒は、1つの提案を持ち出すことにした。 「実は俺も、目が冴えて眠れぬのだ。よければ、酒など付き合わぬか?」 ************************** いつもの龍斗なら、おそらくは恐縮してこのような誘いには乗らなかっただろう。 ただ、今の彼女には眠れないと言う、深刻な自覚がある。体調が最悪だと言うことは、いざと言う時に機敏に動けないことを意味するのだ。そのような人間が、果たして鬼道衆にいてもいいのだろうか───? 律義な彼女のことだ、そのくらいは考えているに違いない。 それに、自分の行動で天戒の安眠を邪魔して悪かった、と言う思いもあったのかも知れぬ。 とにかく天戒は、初めて夜の自室に龍斗を招き入れることになった。 皆が寝静まっているので、給仕を誰かにやらせると言うわけにもいかない。それで、こっそりと台所から酒を持ち込んでの酒盛りと、相成る。 「子供の頃を思い出すな・・・」 知らず知らず、天戒の口元が笑みで緩む。 「子供の頃、ですか?」 なみなみと注がれた盃の酒を舐めながら、龍斗が尋ねた。 「ああ。よく尚雲と夜中に、腹が空いたと台所で食い物を探してな。誰にも分からないようにしたつもりだったのだが、所詮子供のすることだ。すぐに露見して、2人して嵐王に・・・先代の嵐王に、叱られたものだ」 気楽な子供時代を思い出し、切なさと共に懐かしさをよぎらせる。 「・・・龍斗、お前はどうなのだ? 子供の頃ならではのたわいない思い出など、ないのか?」 「さあ・・・どうでしょう」 「ふっ、ごまかしたな。俺にばかり話させるとは、ずるいと思わぬか?」 酒が進むにつれ、滑らかになって行く言葉。 ひとしきり無難な世間話などした後で、頃合いを見計らって天戒は静かに切り出した。 「・・・さっきの夢の話なのだがな・・・」 「・・・・・!?」 ほろ酔い気分で穏やかになっていた龍斗の雰囲気が、一瞬にして張り詰めたが、気づかぬフリをする。 「桔梗に聞いた。何やら物騒な夢に魘されているらしい、と」 「・・・桔梗には、迷惑をかけて済まないと感じているのですが・・・」 「責めているのではない。ただ、俺も何かの力になれないものか、と思ったのだ」 「・・・・・」 俯く龍斗の様子を眺めながら、また1杯と盃を傾ける天戒。 「・・・お前はさっき、『所詮は夢の話ですから、どうしようもない』と言っていたが、俺はそうでもないと考えている。夢はそれこそ所詮、人の心が見せるものではないのか?」 「・・・?」 「よく、無意識のうちの心配事があったりすると、その事柄を夢に見るようなことがあるだろう。それと同じだ。・・・お前がそのような夢を見るようになったのにも、それ相応の理由があるのかも知れぬ」 「理由・・・」 「ひょっとしたらその理由とやらが、俺がお前をこの鬼哭村へ連れて来てしまったこと、自体にあったとしても・・・大しておかしくはないな」 時々、天戒は想像してしまうのだ。鬼道衆の戦力になれば、と龍斗をこの村へ連れて来てしまったが、それは彼女にとっては良かったことなのだろうか、と。 穏やかで静かな性格の彼女を、徳川幕府転覆などと言う大それた野望に巻き込んでしまったのは、自分の我が侭ではないのか、と・・・。 「・・・それは違うと思いますけどね・・・」 天戒の危惧を、緩やかな口調で龍斗は否定する。控えめに笑みながら。 「オレが天戒殿について来たのは、オレ自身の意志からですよ。戦っているのもね。そのこと自身には、後悔もしてません。・・・こういう言い方は酷いかもしれないけれど、オレがここにこうしていることに天戒殿が変に責任を感じるのは、オレという人間への侮辱かも、知れませんよ?」 いつもの龍斗なら、まず口にしない種類の言葉。酒が彼女を饒舌にしているのだろう。 だが今の天戒にとって、この言葉は何よりの賛辞だったし、救いにもなり得た。 龍斗は盃の酒を呷ると、ぽつぽつと言葉を繋げる。 「・・・第一、オレがこの村へ来た当初は、そんなに酷い夢は見なかったんです。あの夢を見るようになったのは、ここ最近のことで・・・」 「あの夢、ということは・・・まさかいつも、同じ内容の夢なのか?」 「・・・ええ」 「なら尚更、何か理由があるとしか思えぬがな。どんな夢を見ると言うのだ?」 「・・・・・」 「人に話せないほどに惨(むご)い夢、なのか・・・? それなら無理にとは言わぬが」 天戒の気遣いに、龍斗はかぶりを振って答える。 「惨い夢では、ありますけどね・・・それ以上に、自分の無力さを目の当たりにさせられているようで・・・目が覚める度何も出来ない自分が、苦しくてやりきれなくなるんです」 「やりきれない?」 桔梗の話では、龍斗を悩まし続ける夢と言うのは、彼女が殺されそうになる内容だと聞いているのだが。 怪訝に思う天戒の前で、前髪をかき上げ辛そうに目を伏せて、龍斗は打ち明けた。 「人が・・・殺されるんです。オレの目の前で、何人も。なすすべもなく・・・」 《続》 多分、次で終わります。
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