ちゃんちゃん☆のショート創作

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過ぎし夢 来たる朝(3)外法帖・天戒×女主?
2002年02月28日(木)

※「過ぎし夢 来たる朝」は1)〜2)までの話だけなら、別に女主人公ものにすることもないんですよねえ、このSSは。それがどうして、あえて女主人公ものになったか。今回はそれがテーマみたいなものです(笑)。女主人公ものが許せない、って人は、読まない方が無難だと思います。
 って言うか、一度はやってみたかったネタの1つなんです。ただ「剣風帖」の男性キャラだと、ちゃんちゃん☆ の解釈ではちょっと無理なんじゃないか、と。もっとも、こーいう少し茶目っ気のある御屋形様は御屋形様じゃない! と言う方は遠慮して下さいね。
 今回、ぜひとも天戒さんに言って欲しかったセリフは、「ほんの座興のつもりだったのだ・・・許せ」であります。ははは・・・☆

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過ぎし夢 来たる朝(3)外法帖・天戒×女主?

 明け方に見る夢は、正夢になるという・・・。

「人が・・・殺されるんです。オレの目の前で、何人も。なすすべもなく・・・」


 思い出すのも辛いと見える。龍斗は自分で酒を盃に注ぐと一気に飲み干し、ほとんど吐き出すように告白した。
 そのくらい勢いがつかないと、話す事が出来ないのだろう。

「・・・夢の中でオレは、誰か数人の親しい人間と一緒にいるんです。それが突然、何者かに襲われて、斬って捨てられる・・・」
「・・・・・」
「オレは必死に動こうとするのに、体が石になったみたいにピクリとも動かなくて。そうこうするうちに、次々に仲間たちはオレの目の前で血まみれになって、倒れていく・・・。そしてその場に生きているのが、オレだけになるところで目が・・・覚めるんです・・・」

�犹Δ垢福△笋瓩蹇∋Δ気覆い任�れ��

�爛�レノ、大切ナ仲間ヲ、殺サナイデ───!��

<───桔梗が聞いたうわ言は、そういう意味だったのか・・・>

 天戒の呟きは苦い。
 桔梗から報告を受けた時、もともと変だとは思っていたのだ。

 龍斗は確かに穏やかで静かな性格ではあるが、殺されかけたからと言って見苦しくも、命乞いをする人間ではない。
 傲慢、と言うのとは違う。そうなる前に何とか現状を打開しようと、足掻いてみせる方なのだ。他人に言わせてみれば武士らしくない、と言うことになるだろうが、天戒は決して彼女のようなやりようを嫌ってなどいなかった。
 鬼道衆たちも、そうやって生きてきたのだから。

 ───ただし、龍斗が命乞いをしないと言っても、それはあくまでも自分の身に危険が及んだ時、に限られる。
 社交的なわけではない彼女は、それでも人との繋がりをそれは大切にしている。そして自分が心を許した人間を、全力を持って守ろうとするのだ。万が一、例えば天戒が殺されそうになったとして、彼の助かる条件に彼女の命を、と言われれば、ただちに自分の首を掻き切りかねない。
 そんな彼女が、たとえ夢であっても助命を請ういとまも与えられず、仲間が殺されるのを手をこまねいて見届ける、などという事態に陥っていたとは・・・。
<日に日にやつれていっても、無理はない話だな・・・>

 ───そこまで考えて、天戒はあることに気がついた。
 龍斗の言う『夢の中の仲間』とは、どうやら自分たちではないらしい。まあ夢ならば、見たことも会ったこともない人間と知り合いだという設定も、よくあることではあるが。

「誰か、親しい人間、と言ったな、龍斗。それはお前の知り合いなのか?」
「違う・・・と言いたいところなんですけど・・・」
 曖昧な返事に天戒は首を傾げたが、黙って先を促す。
「・・・こう何度も見ていると、本当に赤の他人なのか? って気がして。会ったことのない人間のはずなのに・・・。夢の中では彼らの顔も良く見えないんですけど、だんだん見知っている人間の顔のような気が、してきて・・・」
「雰囲気が違うだけで、実は夢の中で殺され続けているのは俺たち鬼道衆じゃないか、と思うようになった───違うか?」

 論点をぴしりと突いてやると、龍斗は押し黙った。それは無言の肯定を意味する。
 彼女の、盃を持つ手が震えているのを見て取り、天戒はそっと自分の手を添え、畳の上に盃を置かせた。
 そして自然、見詰め合う格好となった眼差しのまま、彼女に告げる。

「よく、打ち明けてくれたな、龍斗」
「え・・・・?」
「お前は心底、俺たちを心配してくれているのだな・・・仲間として」
 ひどく誇らしげな気分と共に、天戒は笑い返した。

「天戒殿・・・」
「不吉な夢を告げたと言うのに、どうして・・・と言う顔だな。だがこうは考えられないか? お前は、俺に鬼道衆の危機を教えるためにそんな夢を見たのだ、と」
「え・・・?」
「夢と言うものは、その者の心の迷いや、焦りをも具現化すると言う。お前はきっと、俺たちのこれからの戦いに危ういものを感じているのではないか? 嵐王辺りが聞けば、きっと甘いだの弱気なことを言うなだのと、言うだろうが・・・」
「・・・・・」
「龍斗、俺はお前には感謝しているのだぞ?」

 酒の勢いが言わせたのだろう。天戒は、いつもの鬼哭村の長としてならまず口にしない言葉を、唇に上らせた。
「他人には言いにくいことも、控えめながら進言してくれる。俺を特別扱いになどせず、1人の人間として接してくれる。だから・・・お前の言葉に、俺はどんなにか救われたか分からない・・・」
「・・・天戒殿」
「だから今回もそうなのではないかと、俺は思うのだ。お前の夢は、俺たちに告げてくれているのだと。───自分の力に奢り高ぶってばかりいれば、きっと待っているのは破滅だけだ、と言うことをな」
「・・・・・」
「悪夢は確かに不快だろう。だが、来たる未来に本物の悪夢が来ないよう、何かが俺たちに警告をしてくれているのだ───そう思えば、そんなに悪いものでもあるまい?
だが・・・お前には悪いことをした。1人だけ、そのような苦しみを味わっていようとは。龍斗、すまなかったな・・・」

 ───静かに天戒が言うのを聞くうち。
 龍斗の視線がだんだんうつろになっていくのが、傍目からも分かる。
 天戒に諭されるうちに不安が癒され、今までの睡眠不足もあいまって、一気に気が緩んだのだろう。

 コトッ・・・。

 畳に置かれていた盃だけは、危うく押しのけはしたものの。
 龍斗はまるで気を失うがごとく、睡魔のためにその場に倒れ伏した。


<・・・ここまで正体を無くすぐらいに、眠り込むとは・・・>
 傍らに敷かれた自分の布団へと寝かせてやりながら、複雑な心境で溜め息を漏らす天戒。
 いつもの、特に戦闘中の隙のない彼女を見慣れているだけに、今の無防備ぶりが信じられない。それだけ、連日の悪夢と寝不足がたたった、ということなのだろうが───。

<もっとも・・・龍斗、お前の見た夢と言うのには、別の意味に解釈できないことはないのだが・・・>
 手酌で酒を注ぎ、天戒は苦いものを1人飲み干す。
<お前が近い将来、俺たち鬼道衆とは違う者たちと仲間になる、と言う、な・・・。お前は優しいし、その思いやりを貫き通す強さもある。だから、俺たち以外の人間から好かれても、決しておかしくはないだろう・・・>
 だがその場合、龍斗の仲間たちを斬って捨てるのはあるいは、自分たち鬼道衆と言うことになりかねない。天戒が自説を決して彼女に打ち明けなかったのは、そのためである。
 ───そうでなくても、鬼哭村にいながら幕府への怨みを特に抱いていない、と言う龍斗は、どこかしら他の仲間に気兼ねをしている。だから鬼道衆以外の仲間が出来る、などと口にすれば、今まで以上に気に病むに違いないではないか。

 そこまで考えはしたが、天戒は軽く頭を振って悪い気分を振り払った。
 夢は所詮夢だ、現実とは違う。そんなに深刻に考えていては、こちらの身が持たない。
 どうせ考えるなら、前向きに捕らえようではないか。そう、さっき自分で言ったように「俺に鬼道衆の危機を教えるためにそんな夢を見た」と言う風に・・・。

<とにかく今は、じっくりと休め龍斗。苦しむお前は桔梗同様、俺も見たくはないのだ・・・>

 安らかな寝息が、朝近い室内に聞こえる・・・・・。

***********************


 早朝、いつものように目が覚めた九桐尚雲は、たらい桶で顔を洗いながらも少しだけ違和感を感じていた。
 別に体の調子が悪いわけでもない。村に不穏な空気が流れているのでも。
 ───では一体何故、と考えた時に、やっと彼は思い至った。
 いつもなら、自分より先に起きていたらしい龍斗と顔を会わせるのに、今朝はまだ一度も彼女を見掛けていないのだ、と・・・。

 彼女の体調がすこぶる悪いのは、風祭に言われるまでもなく気がついていた。どうやら夜、眠れないでいるのだとも聞いている。
 そのくせ本人は律義にも、朝早く起きてくるのだ。もう少し横になっていても誰も咎めはしまいに・・・内心懸念していただけに、彼は安堵に胸をなで下ろす。
 多分昨夜、きちんと眠る事が出来た証拠だろう───そう解釈した彼は、同じく彼女の珍しい不在に「様子を見てくる」と言い出した風祭を慌てて制するのだった。

「大体彼女も、ああいう格好をしているとはいえ女人だぞ、風祭。深い仲でもない女の寝起きの顔を見るのは、礼儀を失すると言うものだ」
 廊下を歩きながら、九桐は後から歩いて来る風祭にそう言い含める。
「何でだよ? 大体、あいつが女だって分かるまでは、俺もあいつと同じ部屋で寝起きしていたんだぞ。今更寝起きの顔ったって・・・」
「女は特に、身だしなみに気を払うからな。自分がだらしない、と思っている姿は他人には見せたくないのだろう」
「・・・何かやけに詳しくないか? 九桐。坊主って、女とは無縁でいなきゃいけないんじゃなかったのかよ」
「ははは、俺は破戒僧だからなあ」
「それを言うなら生臭坊主だろ・・・」

 言い合いながら2人が辿りついたのは、天戒の部屋の前である。珍しく天戒も、今朝はまだ起きて来ていなかったためだ。
 ───ここで九桐が、天戒と龍斗が「2人揃って」起きて来なかった、と言う点に思い至らなかったのは、あるいは迂闊だったかもしれない。自分で風祭に言っておきながら、龍斗が異性なのだと特に意識していなかったのは、実は彼自身だったとも言える。

「若、そろそろお起きになられませんと・・・」
 ───ともあれ。
 彼はまず外から声をかけてから、静かに部屋の襖を開けたのだが・・・唐突に動作が停止した。
「?」
 相棒の異変に気づいた風祭が、まずは九桐に、それから天戒の部屋の中へと視線を転じ───やはり硬直した。
「た、たたたたたた・・・・・・・・・」
 そう言ったきり、耳まで真っ赤になった風祭の前にいたのは。
 「誰かに」腕枕をしてやっているような体勢で寝入っているこの部屋の主・天戒と。
 その横で、どうやらやっと事の次第を把握したらしく、風祭に負けず劣らず真っ赤になっている龍斗が。
 同じ布団の中にいる姿であった。


「た、龍斗、お前何時の間に御屋形様とっ・・・」
 風祭は動揺のまま大声で叫びそうになったが、そこで我に返った九桐に口をふさがれる。
「むごむごむごっ!」
「声が大きいぞ、風祭。まずは落ち着け」
 小声で諭され、渋々風祭は黙り込む。それを見守ってから、九桐はコホンと咳払いの後、静かに呟いた。
「お前が若の部屋にいると言うことは・・・龍斗、お前が夜這いに忍んで来たのか? いつものお前らしからぬ大胆さだな・・・」
「ち、ちちち、違うって」
 龍斗の顔色は今や、真っ青になっている。
「仮にも桔梗を差し置いて・・・じゃなくて、天戒殿の同意も得ないのにそんなこと・・・でもなくって、ええと、違うんだ、そうじゃないんだ・・・」
 彼女がわたわたと慌てふためく様を見ながら、さしもの九桐も自分の顔が強張っているのを自覚せずにはいられない。
 しかし、いくら天戒も龍斗もちゃんと着物は身に付けているとは言え、このような風景を目の当たりにしては他に解釈の仕様がないではないか。
 龍斗が、天戒と、昨夜、同衾した、と言う状況以外には!


 が。
「・・・・・・・・・・・・・っ」
「?」
「くっ・・・くっくっくっ・・・・・・」
 その時、緊迫の場には不似合いな忍び笑いが、九桐の耳を打った。
 その声を辿れば、さっきまで寝入っていたはずの天戒の肩が、かすかに震えているのが見える。
「・・・・・・・・・・・若・・・・・・・」
 押し殺したような九桐の声に、ついにこらえきれなくなったのだろう。
「ははははははははははっ! こ、こうも、うまく引っかかるとは思わなんだぞ・・・」
 風祭と九桐、そして傍らの龍斗は、世にも珍しい九角天戒の、涙を目の端ににじませて豪快に笑い続ける姿、と言うものを目撃する羽目になった。

「・・・天戒殿・・・☆」
「済まぬな、龍斗。ほんの座興のつもりだったのだ・・・許せ」
 謝りつつも、未だ天戒の笑いは止まりそうにない。
「つまり・・・わざと俺たちが誤解するように仕向けたと言うわけなのですな? 若」
「そういうことになるな。・・・断っておくが、俺はさっきまでずっと、龍斗の寝顔を肴に酒を飲んでいたのだ。だが尚雲たちがこちらに来る気配に気づいて、少しからかってやろうととっさに、龍斗が眠っていた布団に潜り込んだと言うわけだ」
「え? え? え?」
「だから澳継、俺はまだ龍斗には手を出しておらんぞ。安心したか?」
「な、なななんで俺が安心なんてっ!!」
「しかし、澳継と龍斗の反応は予想しておったが、尚雲までもがああも動揺するとはな。朝から珍しいものを見せてもらったぞ」
「若・・・お戯れも大概になさいませんと・・・」

************************

 大騒ぎをする風祭と、苦い顔を主に向ける九桐を尻目に、龍斗はようやっと冷静さを取り戻しつつある。
 しかし───龍斗はふと、先ほどまでの自分を省みた。
 とにかく動揺せずにはいられなかったのだ。静かに意識が覚醒してみれば、自分はこともあろうに、天戒に腕枕をされて眠っていると来る。しかも自室ではなく、天戒の部屋で。さすがにあの時は、まだ寝足りないと言う気分が一気に吹き飛んでしまった。
 一体どうしてこんなことに、と思っていたら九桐の声が聞こえ、隠れようとするいとまも与えられずに襖が開けられ───あれだけ血の気が引いたと感じた瞬間は、一生をおいて他にないだろう。
 それがよもや、天戒のたわいない悪戯だったとは。
<まあ・・・何もなかったってことだし・・・覚えもないし、いいか。何だかんだ言っても、天戒殿には一晩酒に付き合ってもらったわけだ。このくらいの戯れ言、お礼だと思えば・・・>

 その場で安堵の長嘆息を漏らす龍斗を横目で見ながら、主従の会話は続く。
「・・・そう言われれば、かなり酒の匂いがなさいますぞ若。一体どのくらい嗜まれたのやら」
「そう言うな尚雲。龍斗と差し向かえで呑む機会はめったにないし、おまけに龍斗は真夜中に水浴びをしていてな。冷え切った唇まで暖めるのには、かなりの酒が必要だったのだ。・・・それに俺が飲まないと、どうせ遠慮して盃が進まないのは分かりきっておったし」
「済みませぬ。そういうお心づかいでしたか、天戒殿」
「・・・と言うのは、俺が深酒をする口実に過ぎん。気に病むな」
 そう笑う天戒を、龍斗は今までよりずっと眩しく見つめていたのだが。

「ところで、悪夢は見なかったのか? 龍斗」

 言われて我に返る。
 今までぐっすりと寝入っていて、夢など見た記憶はない。
「・・・ええ、おかげさまで」
「そうか。明け方に見る夢は正夢となると言うからな。悪い夢でないのは幸いだ。・・・さあ、身支度をしてこい、朝餉の時刻になる」
 遠まわしに退室を命じられ、龍斗は軽く頭を下げて自室へと引き上げることにした。


 自室で身支度を整えている時───ふと。
 見ていなかったはずの今朝の夢が、脳裏に蘇る。
 だがそれは、彼女が恐れていた恐ろしい夢とは程遠いものだった。

 大勢の人がいて。
 場所は何故か、ここ鬼哭村以外の外の世界で。
 鬼道衆の皆がいて。鬼道衆以外の人間も、いて。
 皆それは嬉しそうに、笑いながら酒を飲み交わしている、夢・・・。


<明け方に見る夢は、正夢、か・・・>

 切ないような、懐かしいような気持ちで龍斗は、緩やかに微笑んだのであった。


 悪い夢も楽しい夢も、夢は夢。いつかは覚める。
 けれど、そうありたい、と願う「夢」は・・・・。


《終》



<おまけ>

「ところで若、さきほど『冷え切った唇まで暖める』と申されたようですが・・・どうやってそれを確かめられたのです?」
「それを聞くのは野暮だと言うものだぞ、尚雲。良いではないか。安眠の見返りにそのくらいの、役得をもらってもな」
「・・・何言ってんだ? 九桐。御屋形さまも、一体どう言う意味なんですかー?」

***********************

*ぬわんでこれを、女主人公で書いたか、理由は分かりましたね? そう、全ては「同衾誤解ネタ」を書きたいがため!! 男同士で寝ていても、よほどの雰囲気でない限りはそういう誤解はされないもーん(笑)。
 良かったら、HOMEの方の掲示板にでも感想下さいませv
 そのうちこれも、加筆訂正の上、編集してHOMEの方にUPしたいです。でもいつになるやら・・・☆





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