※とにもかくにも2話めでございます。 そろそろ火附盗賊改以外の外法帖キャラも出さなきゃいけないんですが・・・良く考えたらこの人たち、榊さんの第壱拾壱話での武勇伝、御厨さんからでも聞かせられない限り、知らないんじゃ・・・☆ ううっ、絶対救済してあげるからね、榊さんv ***************** 茂保衛門様・快刀乱麻!(2)外法帖 イライラ。 ぼそぼそ。 イライライラ。 ざわざわざわ。 イライライライライライラ。 ひそひそひそひそひそひそひそ・・・・。 ・・・ひょっとしてこれって、悪循環って奴かしら? あたしがイラついてる。 ↓ 同僚たちは遠巻きにして、触らぬ神に祟りなしを決め込む。でも気になってしょうがない、って感じ。 ↓ そんなところにいないで、話し掛けるなり何なりしなさいよ! と更にイラついてしまう・・・。 ・・・不毛だわ・・・☆ そりゃあたしだって、何も好きでイラついてるんじゃないわ。けど目の前に突きつけられちゃった命題の困難さに、眉間に皺も寄ろうってものよ。 でも黙ってるのも限界に達してたみたい。欲求不満が溜りに溜まって、いい加減精神衛生的にも良くないじゃない! って思わず、不平を口に出してしまっちゃってたのよねえ。 「ああンもう! あのタヌキ親父っ! なあにが適材適所よっ、自分が厄介ごと背負い込みたくないだけじゃないのさっっ!!」 「・・・・・榊さん?」 「はっっ☆」 ───あらイヤだ、いけないわ。あたしったら、外から戻ってきていた御厨さんが、いつの間にやら側へ来ていたのにも気づかずにわめきたててたみたい。 照れくささ半分、気まずさ半分を咳1つで誤魔化し、部下に相対するあたし。 「ご苦労様。見回り終わったのね、町の皆はどうだった?」 「ええ、今のところは不穏な事件などはありませんでしたけど・・・」 巡回報告をしながら、御厨さんてばどこか奥歯にものの挟まったような言い方をする。 ・・・分かってるわよ。あなたが聞きたいことは。 でも今は待ってくれないかしら。あたしがある程度、冷静さを取り戻す時期までだけでいいから。 そう思ってあたしは、御厨さんの不審げな眼差しに気づかないフリをしてたんだけど・・・。 なのにこの堅物、周囲が小声で「ヤメロ」だの「黙ってろ」だの言って止めてるのに気づいてなかったんでしょうねえ。欲求の赴くまま、思うまんまにあたしにズバッ! と単刀直入ってヤツをやらかしてくれたわ。 「やはり奉行所から、例の路上焼死事件を押し付けられたんですか? 榊さん」 「御厨さん・・・前から思ってましたけどね・・・あなたのそんな、命知らずで融通の利かない性格、ほんっっっとおおおおおっ! に好ましいわあ・・・【怒】」 怒気のこもったあたしのイヤミに、さしもの彼も聞く時期を誤ったと悟っておとなしくなる。 ・・・ふん。そんな殊勝な表情、しないでよ。あたしの方が大人げなかったかって、思うじゃない。 もっとも・・・部屋にいる皆も、さっきからあたしに聞きたがってた事なんでしょうから、そろそろ種明かししたところで罰は当たらないでしょうね。 「・・・ま、いいわ。今更隠したってしょうがないから、教えてあげましょう。みんなも、そのままで聞いて下さいな。───御厨さんがさっき聞いた通りあの事件は、あたしたち火附盗賊改が担当することになりました。奉行所のタヌキに、口先三寸で丸め込まれちゃってね。色々と忙しい最中だけど、よろしく頼むわ」 口調がまだイラついてるけど、このくらいは許して欲しいものよ。 「口の達者な榊の旦那が、口先三寸で丸め込まれるってさすがは奉行所長官っすよね、親分」 「与助・・・あなたあたしを馬鹿にしてるんですか?」 余裕のない表情で睨み付けたら、慌てて御厨さんの後ろに隠れるのは勿論与助。 ったく、親分がああなら子分も遠慮がないわね。大体自分の親分の上司がコケにされたのに、あのタヌキを誉めるってどういう了見よ。 それにね。あたしだって普通の状態なら、タヌキ親父の言いなりになんて、ならなかったと思うわ。だけど、あたしが他ならぬ事件の目撃者、ってことが、事態を動かしがたいものにしちゃってるし。 ・・・おまけに今、ここ(火附盗賊改)には長官がいないの。�猊堽犬了�故�瓩箸笋蕕農萋�、亡くなっちゃってね。つまりあたしたちの主張を後押ししてくれる人間が、いないわけ。そんな状態じゃ、奉行所長官と渡り合おうって方が、無謀だと思わない? ───ところで、今回の事件とは関係ない話なんだけどさ。 あたしたち火附盗賊改が廃止になった背景には、今回の長官の不慮の死も遠因になってるとあたしは思うの。 何せ火附盗賊改っていうのは結構お金がかかる割に、幕府からはそんなに経費は降りない。自然、長官が自腹を切るって形になってしまう。だから歴代の長官は、そこそこお金を持ってる人がなってたの。 それでも火附盗賊改方長官ともなれば、出世しようと思う御先手組にとっての足がかりには違いないから、今までなら何とかなり手もあったんだけど・・・今幕府がゴタゴタしているでしょ? そんな物騒な時期に、そんなもの引き受けたがる人間は、早々いなかったってことみたい。 あるいは上の方々でもごく良心的な何人かが、江戸の町の風紀粛正のため内心は廃止させたくない、って思っていたとしても、賛成すれば当然・・・ 「だったらお前が長官になれ」 なーんて言われかねない。だから、彼らの保身のため廃止させられたんじゃないのかしら。あくまでもあたし個人の無責任な憶測の1つ、だけどね。 ・・・話がそれちゃったわね。元に戻しましょ。 上司と部下の間に挟まれた格好の御厨さんは、とにもかくにもあたしを宥めることにしたみたい。 「・・・しかし榊さん、今回の事件は人へ、と言うやや特殊ではありますが、所詮は火附けでしょう? 奉行所よりは明らかに、私たち火附盗賊改の出番だと思いますが」 彼の言い分はごもっとも。でももし彼が、あの時あたしと同じ現場にいたとしたら、きっと違う判断を下したと思うわね。 あたしは1冊の帳面を、御厨さんに見えるよう机の上に置いた。これはさっきから、あたしが座っていた座布団のすぐ横に、いつでも取り出せるように置いてあったもの。 「・・・これは?」 「今回の被害者の死体および現場検分を記録したものですよ」 遠まわしに目を通すように、と示唆したのに頷いた御厨さんは、生真面目にも「拝見します」と言ってから帳面をめくる。 「時に与助」 「へ、へい」 御厨さんの後ろからこっそり、と帳面を覗いていた与助は、あたしの問いかけにビクッ! と飛び上がる。あたしが見ても良いとはまだ言ってない帳面を覗いていたことを、怒られるとでも思ったのかしら。 「あくまでも仮定の話なんだけどね・・・あんた、もし人に火をつけようとすれば、どんな方法を取る?」 「はあ?」 ───与助が面食らうのも無理はない。 あたしたちは他ならぬその火附けを防ぎ、火附けの犯人を捕まえるのがお仕事。なのに何で火をつけようとすれば、なんて聞くんだ? ってことなんでしょうけど、時には犯人の身になって推理しないと、理解できないことも出て来るのよねえ。 与助はそれなりにうんうんとない知恵を絞って、考え付いたままに口にする。 「・・・一番手っ取り早いのは松明(たいまつ)でじゃ、ねえっすかね?」 「事件は昼間、それも人通りが多い街中で起きたの。お天道様がまだ出ているのに松明なんて持って歩いてちゃ、目立つし警戒もされるでしょ」 「そこはそれ、頬っかむりでもして・・・」 「昼間に顔隠している人間が、どこにいるのよ? おまけに松明持ってたんじゃ、余計不審がられるわ。火をつける前に、逃げられるか大騒ぎされるのがオチ」 「そ、そうっすね・・・。じゃ、こういうのはどうっすか? 煙草を吸い吸い歩いていて、すれ違いざまに袖にでも火をつける・・・」 「うーん、考えとしては悪くないわね・・・だけどあたしが見てた限り、ホトケさんは燃え上がる直前まで、1人で何かブツブツ言っていてね。みんな気味悪がって近寄ろうとしてなかったのよ。それに、被害者の火傷が一番酷かったのは、ちょうど胸の辺り。つまり、胸に火をつけられた、ってことなの。確かに袖とか、裾とかに火をつけられたのなら、かなり前に火をつけられていて気づくのが遅れた、って事もあるでしょうけど」 「いくらなんでも、胸に火が点いて気がつかねえ馬鹿はいねえっすね・・・」 再び考え込んだ与助は、しばらくしてポンと手を打つ。 「火矢、ってのはどうっす?」 「かや? 燃料を入れた筒を括り付けた矢に、火をつけて飛ばすって奴?」 「そうっすよ。それなら遠くから飛ばせるし、目撃もされにくいと思いやせんか?」 「確かに目撃される危険はなくなるけど・・・」 あたしは御厨さんの読んでいる帳面をちら、と見やって、検分記録を思い出しながら言った。 「・・・そうなると、当然現場には矢が残るわね。でもあたしが見た限り、そんなもの残ってなかったの。奉行所の検分でもそうなってたしさ」 「飛ばす前の矢に紐も括り付けておいて、刺さると同時に引っ張るとか」 「あの時の火の勢いじゃ、きっと紐も燃えちゃうでしょうね・・・。燃えない鎖紐って考えもあるでしょうけど、それじゃあ逆に矢が重くなって飛ばないでしょうし」 「現場に残らないものってんなら・・・そうだ、火の点いた布か紙に石を包んで、遠くから飛ばすって言うのはどうです? 石なら、元々地面に落ちていたものと区別がつかないし、布も燃えて証拠隠滅、ってことで」 「・・・あんた、何ならやってみる? そんなことやったら投げる前に大火傷、下手すりゃ自分の方が先に焼け死んじゃわない?」 「・・・・・・・・」 あたしの立て続けの冷たい指摘に、さすがに与助は半泣きになっている。ふん、根性なしなんだから。 「何なんすか〜〜! あっしの言うことにいちいち茶々を入れるなんて〜〜。それなら榊様は何か、代案でもあるんスか〜〜?」 「ないから困ってるのよ」 「・・・へ?」 それでも一縷の望みをかけて、一応聞くだけ聞いたんだけどね。あたしの頭が御厨さんに負けず劣らずおカタくて、考えうるべき仮説が1、2個抜けてるんじゃないか、って思ったから。自分1人で考えてるよりは他人の意見も聞いた方が、偏りが少なくて済むし。 「分かる? 与助。こうなると他人からの火附け、って疑いが極めて低くなっちゃうでしょ」 「・・・ごもっともで」 「だから一挙に考えを飛躍して、被害者自身の火附けか、あるいは事故、って可能性も考えたんだけど・・・」 「無理ですよ榊さん・・・それも有り得ないんでしょう?」 ここで初めて。 ただひたすら帳面の文字を目で追い続け、今までずっとあたしと与助の話にも口を挟まずにいた御厨さんが、視線をこちらへ向けた。 「被害者が亡くなった当時の所持品には、煙草や火打ち石の類はありません。おまけに油の類も見つかっていないんです。それらが燃えた残骸もない・・・事故にしろ被害者自身の火附けにしろ、火種も燃料も持ち合わせていない人間に、火をつけるなんて無理だ・・・」 御厨さんはそう締めくくってから、静かに机の上へ帳面を乗せる。 「・・・榊さんがこの事件を引き受けられるのを渋られたのは、こういう事情からなんですか? どう考えてもこの事件、普通の人間の仕業じゃありえない・・・」 彼の顔色は相当悪い。 ───それはそうよね。この検分記録と、あたしの目撃談から察するに、被害者は人間業とは到底思われない方法で、火をつけられて殺された、ってことになるんだもの。 でも、仮にも火附盗賊改の与力が、事件解決の目処(めど)が立ちそうにないからって臆してた、なんてみっともなくて言えないじゃない。 だからあたしは、逆に御厨さんへ質問してあげた。 「御厨さん、あなた、幽霊とか鬼の類、斬り殺した経験おありになるかしら?」 「・・・・・いえ、あいにく・・・・・」 「それは素敵な奇遇だこと。・・・実はあたしもなのよ。でも心配御無用。これから多分、もうイヤっ! てほど斬り殺さなきゃならなくなると思うから。人生何事も経験だと、せいぜい割り切っていかなきゃね・・・お互いに」 ホントはあたし、幽霊とか物の怪とかそういう得体の知れないものは苦手なんだけど、そうも言ってられない。 モノは火だし、放っておけばこの江戸の町が焼け野原になる、なんて危険もあるわ。そんなの火附盗賊改与力として、黙っていられないもの。 ・・・大体あんな、焼け死んだばかりの人間なんて、気色は悪いし後味も悪いしのものを見せられた怨み、きっちりノシをつけて返してやらなきゃ!! あたしはそう思うことで、おそらくは火附盗賊改としての最後の難事件解決を、深く心に誓ったのだった。 <続> ****************************** ※実はこんな、謎解きモードの「東京魔人學園」SSを書くのは、ちゃんちゃん☆ は初めてではありません。「外法帖」より先に発売された「剣風帖」の敵キャラでやはりオネエ言葉の(笑)陰陽師を主人公にしたSSを、何度か書いた経験があります。(詳しくはHOMEをどうぞv) それで今回、榊与力を主役にしてSSを書き始めて思ったのは「ああっ! 何てすらすらと話が進んでいくんだ!」でした。いや執筆スピードじゃなくて(笑)話の展開が、です。だって榊さんは火附盗賊改の与力で、仕事として今回事件に関わっていけるんですもん。周囲には嫌な顔はされるかもしれないけど、これは自分の仕事なんだから、ってことではばかりなく取り調べも出来る。推理の材料は簡単に手に入る。おまけにとりあえず後ろ盾(幕府)もあるし。・・・素人探偵なんかじゃこうはいかない。事件の情報をこっそり漏らしてもらおうにも、常識的には不可能ですよねー。現に先述のSSの場合、警察上層部に顔が利くんだけど主人公とは犬猿の仲! の名家のご当主が、悪友を通じて差し障りのないところだけ伝える、という形式を取らざるを得なかったので、結構大変な思いをしました。まあそれはそれで、警察にはまだ知られていない情報を得られるチャンス、みたいに解釈したこともありましたが。 ただ、大義名分がある、調べようと思えばどこまでも調べられる、と言うのはある意味、諸刃の剣です。何故って、どこまでで踏みとどまればいいか、って言うのを決めるのが自分次第だから、下手をすれば踏みとどまる事が出来なくなるって事もありますから。例えて言えば、今まで電話料金に戦々恐々としていたパソコンユーザーが、ネット繋ぎ放題の環境を手に入れた直後、みたいなものかも・・・って、モロに今現在のちゃんちゃん☆ に当てはまらないか・・・?(汗) ちなみに文中の、火附盗賊改が廃止になった遠因への榊サンの憶測とやらは、あくまでもちゃんちゃん☆ の根拠のない想像であります。でも実際、何で物騒な幕末に火附盗賊改が廃止されたんでしょうかねえ? あ、彼らって言わば非常時の軍人みたいなものだったって話だから、もっと大事な�狢召里箸海蹲瓩愴爐蕕寮鑪呂魏鵑靴燭�ったんだったりして・・・って、これも単なる想像ですよ、あくまでも(苦笑)。
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