「硝子の月」
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2001年10月09日(火) <街にて> 瀬生曲

「ちげーよ」
 食べる手は休めずに視線だけを向けて、少年は不機嫌に応じる。
「んで、行く当ては? 宿はあんのか?」
 その言葉をそのまま受け止めたのかどうか、青年は問いを重ねる。
「どっちもねぇ」
「よし。じゃあ俺と一緒に来い」
「はぁ?」
 流石に手が止まった。ティオの眉間には思いっきり縦じわが寄っている。
「何があって家を出たのかは知らねぇし、訊かねぇ。それについちゃ俺もあんまり偉そうなこた言えねぇからな。けど、子供の一人歩きは危険だぜ」
「子供じゃねーし、かっぱらいの片棒担ぐ気も無い」
「馬鹿。ありゃちょっとした出来心だ」
 『出来心』で親友を攫われたのではたまったものではない。


紗月 護 |MAILHomePage

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