「硝子の月」
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「ちげーよ」 食べる手は休めずに視線だけを向けて、少年は不機嫌に応じる。 「んで、行く当ては? 宿はあんのか?」 その言葉をそのまま受け止めたのかどうか、青年は問いを重ねる。 「どっちもねぇ」 「よし。じゃあ俺と一緒に来い」 「はぁ?」 流石に手が止まった。ティオの眉間には思いっきり縦じわが寄っている。 「何があって家を出たのかは知らねぇし、訊かねぇ。それについちゃ俺もあんまり偉そうなこた言えねぇからな。けど、子供の一人歩きは危険だぜ」 「子供じゃねーし、かっぱらいの片棒担ぐ気も無い」 「馬鹿。ありゃちょっとした出来心だ」 『出来心』で親友を攫われたのではたまったものではない。
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