「硝子の月」
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「信用されると思ってんのか?」 胡散臭そうな顔を隠そうともせず、ティオは青年を見遣った。 「まァよ。どーせ金もねぇんだろ? いいじゃねえか。 こんな街でそんな高価な鳥と一緒に野宿なんかしてみろよ、明日の朝にはお前の死体だけ河に浮いてるなんてことになりかねねえぜ?」 「───…」 そう言われ、少年は一瞬黙り込む。そんな馬鹿なと跳ね除けられない身の上が哀しい。 「おまけにお前みてえなよそ者のガキじゃ、仕事だって簡単には見付からねえよ。 こんな所で行き倒れてえのか?」 畳み掛けるような青年の熱心さに、ティオの顔が更に疑わしげになった。 「…で? なんだってお前がその『よそ者のガキ』の面倒を見てやろうなんて思うわけ?」 とげとげしい言葉に、けれど青年はけろりと笑う。 「なに。ちょっとばかしお前さんのことが気に入ったのさ。 …それだけだ」
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