「硝子の月」
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「それはな、『硝子の月』があるからさ」 少年の答えを待たずに、グレンはそう言った。その瞳には抑えきれない感情がある。それは喜怒哀楽で言うのならば「喜」であろうと思われた。 「『硝子の月』……」 「聞いたことぐらいはあるだろ? 『それを手にしたものは世界を手にする』っていう、伝説のあれだ」 ただの迷信だとは言えない、歴史に幾度となく登場する伝説。 「あんたは世界を手に入れたいのか?」 「いや」 少年の問いに青年が笑う。 「見てみたいだけさ。欲しければお前にやる」 それはきっと本心から出た言葉。 「……ルリハヤブサ盗もうとした奴の台詞とは思えねぇな」 「それはもう忘れろって」 ティオの悪態に、彼はがっくりと肩を落とした。
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