「硝子の月」
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2001年10月18日(木) <街にて> 瀬生曲

「それはな、『硝子の月』があるからさ」
 少年の答えを待たずに、グレンはそう言った。その瞳には抑えきれない感情がある。それは喜怒哀楽で言うのならば「喜」であろうと思われた。
「『硝子の月』……」
「聞いたことぐらいはあるだろ? 『それを手にしたものは世界を手にする』っていう、伝説のあれだ」
 ただの迷信だとは言えない、歴史に幾度となく登場する伝説。
「あんたは世界を手に入れたいのか?」
「いや」
 少年の問いに青年が笑う。
「見てみたいだけさ。欲しければお前にやる」
 それはきっと本心から出た言葉。
「……ルリハヤブサ盗もうとした奴の台詞とは思えねぇな」
「それはもう忘れろって」
 ティオの悪態に、彼はがっくりと肩を落とした。


紗月 護 |MAILHomePage

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