「硝子の月」
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「今のあたしにもう一言でも勘違い野郎な台詞を聞かせてごらんなさい? あんたに夜明けはやって来ないわよ……?」 別に疑問文ではないのだが語尾が微妙に上がってしまう。 「ルウファ……君と一緒なら永遠の夜も怖くは無い。寧ろ昇り来る太陽を恨みに思うことだろう! 僕達の夜の終わりを告げる無粋な太陽などな!」 ぶち。 何かが切れる音がした。 「『闇に住まいし昏き御身(…』」 「え?」 「『御身こそは闇そのもの…』」 「ちょ、ルウファ?」 「『我が敵なるものを御身の内に呑み込みて糧となせ――』」 常人には聞き取れぬ呪文が後に続く。 「あの、いきなりそんな闇の高等魔法を……」 引きつった笑みを貼り付けた青年が後ずさる。 「『闇食い』」 「のわぁぁああああああぁぁっ!!」 空中に夜とは違う闇が現れると、青年を呑み込んで消えた。 「……あー、無駄に精神力使っちゃった。でもまぁ」 少女はにっこりと笑う。 「すっきりした♪」 後はただただ静かな夜であった。
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