「どうした?」 青年の声にはっと我に返る。「別に。アニス」 彼からも月からもふいと顔を背けて、窓のほうに腕を差し出す。 すぐに羽音がして、いつもの重みが腕に加わる。「『別に』って様子か、それが」「うるせぇな」 アニスをベッドの枕元に止まらせて、自分は布団に潜り込む。 「やれやれ」と肩をすくめたような気配がして、青年も自分のベッドに戻った。「……なぁ」 少年は静かに呟く。「『硝子の月』を手に入れたら、どんなことが出来んだろうな」