「硝子の月」
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ムキになればなるほど墓穴を掘っていくのが丸分かりである。 なるほど、思っていたほどわかりにくいというわけでもないのかもしれない。意外な側面に思わず笑いが止まらなくなる。 「あっはっはっは、お前にも可愛いトコあんじゃねえか♪」 「今すぐその口閉じねえとコロスぞおっさん」 肉眼でさえ確認できそうな怒気のオーラを放ってくるティオに、しかしグレンは更に人の悪い笑みを浮かべた。初めてつかんだこの少年の弱みらしい弱みが楽しくてたまらない。 「まぁそう言うなって。なぁティオちゃん?」 「うわっ、こらッ!?」 テーブル越しに無理矢理ぐりぐり頭を撫でてやると、それから逃れようとティオがじたばた暴れる。真っ赤になって睨み付けてくるが、リーチの差で向こうからこっちには届かない。 「てめこのっ…!」 眦を吊り上げて少年が怒鳴りつけたその時。
「グッ、モーニン! 麗しき僕の小鳥! ああ今日も類い稀なるその声で愛を囁いておくれ、そうあたかも月の女神の歌声の如くに!」
バン、と食堂のドアをぶち開けて、妙な青年が中に飛び込んできた。
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