「硝子の月」
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2001年11月12日(月) <交差> 朔也

 ムキになればなるほど墓穴を掘っていくのが丸分かりである。
 なるほど、思っていたほどわかりにくいというわけでもないのかもしれない。意外な側面に思わず笑いが止まらなくなる。
「あっはっはっは、お前にも可愛いトコあんじゃねえか♪」
「今すぐその口閉じねえとコロスぞおっさん」
 肉眼でさえ確認できそうな怒気のオーラを放ってくるティオに、しかしグレンは更に人の悪い笑みを浮かべた。初めてつかんだこの少年の弱みらしい弱みが楽しくてたまらない。
「まぁそう言うなって。なぁティオちゃん?」
「うわっ、こらッ!?」
 テーブル越しに無理矢理ぐりぐり頭を撫でてやると、それから逃れようとティオがじたばた暴れる。真っ赤になって睨み付けてくるが、リーチの差で向こうからこっちには届かない。
「てめこのっ…!」
 眦を吊り上げて少年が怒鳴りつけたその時。

「グッ、モーニン! 麗しき僕の小鳥!
 ああ今日も類い稀なるその声で愛を囁いておくれ、そうあたかも月の女神の歌声の如くに!」

 バン、と食堂のドアをぶち開けて、妙な青年が中に飛び込んできた。


紗月 護 |MAILHomePage

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