「硝子の月」
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「やがて現在の国土を統一した建国王は『硝子の月』に願ったのです」
戦乱の世は終わりを告げようとしている。 長かったような、短かったような戦いの日々。 (俺は……?) ずっとそれを見ていた。まるで空気になったように。 人の生きる様を、死ぬ様を、戦う様を、闘う様を――ただ見ていた。 (これは夢か?) 多分そうなのだろう。いつも側にいる相棒がいない。 「いよいよか」 「ああ」 建国の為に立ち上がった頃から共に戦場を駆けた男に頷くのはアルバート。後に「建国王」と称えられる男。 「これで俺も伝説の仲間入りか」 「国を興した時点で既にお前は伝説の中にいるだろう」 冗談めかすアルバートに、人々に賢者と称えられる青年は微苦笑で返した。
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