「硝子の月」
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2002年10月07日(月) <建国祭> 瀬生曲

「さぁ、今度はルウファさんのお話を聞かせてくださいましね」
 彼女はにっこりと笑ってそう言った。
 リディアは既に諦めたように、溜息混じりに燭台に火を灯した。


「アニス」
 少年は親友の名前を呼ぶ。
 アニスは彼の元に降り立つ。
「夢をみていた……この国がこの国になる時の夢――あんなだったんだな」
「ピィ」
 まるで少年のみた夢の内容を知っているかのように、ルリハヤブサが鳴いた。何だかその声までもがとても懐かしい。長い長い夢だったから。しかし窓の外はようやく暗くなってきたばかりである。長くて短い夢だった。
 深くなっていく夜の中で、ティオは静かに呼吸する。
 その瞳の色は、親友の翼と同じ紫紺。月光の下では僅かに青味が増して見えるところまでもが共通の。
「起きてるなら灯りくらい点ければ?」
 唐突に少女の声がして振り向く。いつの間にそこにドアを開けたのか、そこには赤い髪の少女が立っていた。


紗月 護 |MAILHomePage

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