「硝子の月」
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2002年11月23日(土) <建国祭> 瀬生曲

「ええ」

 返ってきた答えは望んだとおりの知っていた答え。
「ごめんなさいね」
 今はっきりと耳に届く、確かに自分に向けられる声。
「俺、どうして……母さん、俺……」
 疑問はぐるぐると頭を回るだけで言葉にならない。
「貴方は私の子供――だから一緒には暮らせなかった」
「どうして?」
 子供が実の母親と暮らせないなどと。
「私が――――だから」
「え?」
 聞き取れなくて問い返すと、彼女は腕を緩めて少年を見詰めた。ひどく哀しそうに。
「まだその時ではないのね」
 そう言いながら何故かルウファに視線を移す。赤い瞳の少女ははっきりと頷いた。


紗月 護 |MAILHomePage

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