「硝子の月」
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「ええ」
返ってきた答えは望んだとおりの知っていた答え。 「ごめんなさいね」 今はっきりと耳に届く、確かに自分に向けられる声。 「俺、どうして……母さん、俺……」 疑問はぐるぐると頭を回るだけで言葉にならない。 「貴方は私の子供――だから一緒には暮らせなかった」 「どうして?」 子供が実の母親と暮らせないなどと。 「私が――――だから」 「え?」 聞き取れなくて問い返すと、彼女は腕を緩めて少年を見詰めた。ひどく哀しそうに。 「まだその時ではないのね」 そう言いながら何故かルウファに視線を移す。赤い瞳の少女ははっきりと頷いた。
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