「硝子の月」
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2003年02月18日(火) <発動> 朔也

「外でおかしな気配がするわ」
  アンジュは憂えた目でそっと遥か外を見遣る。
 ここからでは街の様子を伺うことはできない。けれど、リディアの感覚には目で見える以上のものが鮮明に視えている。
「……何か……とても大きななにか」
「……お嬢様」
 リディアは気遣うようにアンジュの横顔を見遣った。
「動き出してしまった……?」
 アンジュは尚も独りごちる。眉宇はひそめられ、小さな不安のようなものを感じさせる。
「何かが、動き出してしまった」


 音が聞こえない。
 何も聞こえない。
 熱さもない。
 寒さもない。
(ティオ)
 それはなに?
(ティオ、駄目よ。起きて)
 この声は誰?
 何も見えない。
 光だけが見える。
 白い光。
 しろいしろい、ひかり。

「ここは――どこだ?」


紗月 護 |MAILHomePage

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