「硝子の月」
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「やれやれ。『ツイン』も案外使えない……いや、流石は『第一王国』の護り、と言うべきか」 ファス・カイザが無事であることを傍らの魔法使いに知らされて、ウォールランは溜息をついた。 これで数日後にはまた愚鈍な王のお守りが始まると思うと気が重い。 「どうしたセレスティア。具合でも悪いのか?」 「いいえ、何でもありません」 頭からすっぽりと黒い布に覆われている女は静かに頭を振った。 「少し横になったらどうだ。どうせこの中には私しかいない」 自国へと帰る馬車の中にいるのは今この二人だけである。 「ですが……」 「気にするな。その被り物も取れ」 「……はい」 主に促されるままに黒布を取る。簡素に束ねられた淡い銀色の長い髪。 そして。 彼女の瞳は、白い雪花石膏(だった。
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