「硝子の月」
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2003年07月16日(水) <錯綜> 瀬生曲

「『輝石の英雄(ジェム・オブ・ヒーローズ)』は五人」
 壁の肖像画を示しながらアルバート四世が語る。
「黒瑪瑙(ブラック・オニキス)は強力無双の重戦士、黄玉(トパーズ)は俊敏な弓使い」
 三枚目の絵の前で、彼はルウファを見てにっこりと笑った。
「紅玉(ルビー)の魔法使いはお嬢さんに似ている」
 その女性はルウファよりも年上のようだったが、勝ち気な眼差しは肖像画からも充分読み取れるものだった。髪も赤い。
「気の強そうなとこがな」
「何か言った?」
「別に」
 呟きを拾われたティオはふいと顔を背けた。
「早くからアルバート一世と共にあり、彼の右腕であり続けた雪花石膏(アラバスタ)の賢者」
 少年はその顔にも覚えがあった。奇妙な体験の中で見た建国祭前夜、建国王の隣にいた。
「そして私と同じ青金石(サファイア)の瞳、建国王とその妃」
 先程は青年のほうに気を取られていて気付かなかったが、アンジュもまたその二人の面差しを受け継いでいた。子孫だというのだから当然なのかもしれないが。
 そして何故か、自分の母親の面影をもその肖像画に見出す。
「彼等の活躍でこの国は成り、以後「硝子の月」は歴史から姿を消した。そして今でもこの国と共にある」
 若き国王は誇らかに一行を見渡す。
「今ここに『第一王国』国王の務めを告げよう。「硝子の月」を求めるそれにふさわしき者が現れ、時が満ちた時――私は「硝子の月」をこの国から解き放つ」


紗月 護 |MAIL |HomePage

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