「硝子の月」
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2004年06月01日(火) <錯綜> 瀬生曲

「気まぐれな月が誰を選ぶのか、それは妾にもわからぬ。恐らくは月にもわかるまい」
「月にも……?」
「そう。だからそなたは変わらず紡ぐがよい」
「でも…」
 尚も言い募ろうとする少女の可憐な唇に、赤く塗られた爪の先が触れる。手入れの行き届いた長い爪である。
「そうごねるでない。そなたの花のかんばせが歪むわえ」
 白い布に覆われる少女の素顔が見えているかのように、女はくすくすと笑った。


紗月 護 |MAILHomePage

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