「気まぐれな月が誰を選ぶのか、それは妾にもわからぬ。恐らくは月にもわかるまい」「月にも……?」「そう。だからそなたは変わらず紡ぐがよい」「でも…」 尚も言い募ろうとする少女の可憐な唇に、赤く塗られた爪の先が触れる。手入れの行き届いた長い爪である。「そうごねるでない。そなたの花の顔(かんばせ)が歪むわえ」 白い布に覆われる少女の素顔が見えているかのように、女はくすくすと笑った。