「硝子の月」
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2004年06月03日(木) <災いの種> 瀬生曲

「別に……そうなれって言うならなってやってもいいけどさ」
 溜息をついたのは、呼吸をすることを億劫に思ったからだった。
 この僕が、あいつ等と同じ人間だなんて。
 けれど、それもまた僕が機械の王になるには必要なことだったのだと思うことにする。幾ら『機械王国』と呼ばれるこの国の技術でも、人間並みの思考力を持った機械は生み出せていない。
「そんなものはいらないけどね」
 僕のしもべであり友でもある機械達。曖昧な思考力なんか無いだけに純粋で、正直だ。
「さて、と」
 ついと眼鏡を押し上げる。
「そろそろ行こうかな。大切な僕の分身も壊されちゃったし」
 外に出るのは随分と久し振りな気がした。


紗月 護 |MAILHomePage

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