「硝子の月」
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「ちょっと……待ってくれよ」 明らかに自分よりも格上の人間から「礼」を示される。 今までにない経験は青年を強く戸惑わせた。 「そもそも何でそれを俺に言うんだ。ルリハヤブサを連れてんのはティオで、『運命を知る』ってのはルウファだ」 「だからお前は面白い」 揺らぐ彼に口を開いたのはカサネだった。顔を向けてみれば、声に含まれているのと同じ笑みがあった。 「何だそりゃ」 「いや」 そこから彼女の考えを読み取ることは出来ない。 「ティオとルウファには我が改めて告げよう。今はお前の考えが聞きたい。我が王を仲間に入れてくれるかくれないか」 まるで遊びの輪に入れてくれろという子供のように。 「俺は……」 「お前は?」 紫闇の瞳に問われ、青紫の瞳を見やる。 (何だってこう……) 身分も歳も、多分他にも色々と、自分よりずっと上のくせにこの男は。 「……好きにしたらいい」 溜息交じりに言うと、その瞳は輝きを増した。 「言ったな?」 「言ったよ」 グレンはぐったりと椅子の背にもたれ掛かる。 「よし、祝杯じゃ!」 「言っとくけどな、他の連中がいいって言ったらだからな」 「わかっとるわかっとる」
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