「硝子の月」
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2005年09月30日(金) <揺らぎ> 瀬生曲

「ちょっと……待ってくれよ」
 明らかに自分よりも格上の人間から「礼」を示される。
 今までにない経験は青年を強く戸惑わせた。
「そもそも何でそれを俺に言うんだ。ルリハヤブサを連れてんのはティオで、『運命を知る』ってのはルウファだ」
「だからお前は面白い」
 揺らぐ彼に口を開いたのはカサネだった。顔を向けてみれば、声に含まれているのと同じ笑みがあった。
「何だそりゃ」
「いや」
 そこから彼女の考えを読み取ることは出来ない。
「ティオとルウファには我が改めて告げよう。今はお前の考えが聞きたい。我が王を仲間に入れてくれるかくれないか」
 まるで遊びの輪に入れてくれろという子供のように。
「俺は……」
「お前は?」
 紫闇の瞳に問われ、青紫の瞳を見やる。
(何だってこう……)
 身分も歳も、多分他にも色々と、自分よりずっと上のくせにこの男は。
「……好きにしたらいい」
 溜息交じりに言うと、その瞳は輝きを増した。
「言ったな?」
「言ったよ」
 グレンはぐったりと椅子の背にもたれ掛かる。
「よし、祝杯じゃ!」
「言っとくけどな、他の連中がいいって言ったらだからな」
「わかっとるわかっとる」


紗月 護 |MAILHomePage

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