のづ随想録 〜風をあつめて〜
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【のづ写日記 ADVANCE】

2001年10月11日(木) 電話

 携帯電話って便利だ。

 携帯電話が仕事、プライベートと大活躍してくれているのはもちろん俺だけじゃないだろう。
 俺は営業マン、という仕事柄、出先からあちこち電話をしなければならない状況というのは結構あるので、テレフォンカードの時代から考えれば随分と便利になったものだ。そのテレフォンカードの時代というのも、俺が大阪にいる頃、つまりせいぜい4、5年位前の話。あの頃は俺の周りでも個人用の携帯電話をそれぞれが持ちはじめた頃で、まだ会社から支給されていたのはポケベルだった。ぶーん……、とポケベルが胸のポケットの中で低く唸ると、車で走っていようとなんだろうとあわてて公衆電話を探さなければならなかった。そのせいで公衆電話の中にシステム手帳や大事な資料を置き忘れて、何度肝を冷やしたか知れない。実際、俺はJR奈良駅前の電話ボックスの中に他の何とも代えられないシステム手帳を置き忘れ、手帳はそのまま永遠に帰らぬヒトとなった、という悲しい過去がある。

 そんなことを考えると、今の俺たちは公衆電話をポケットに入れて持ち歩いているようなものだ。待ち合わせ、なんて昔に比べたら便利になった。「あー、いまマックの前まで来たよ。どこだよ、え? もっと先? 早く言えよ」なんて携帯を耳にしながらウロウロしている奴をよく見かける。

 今日、久しぶりに公衆電話から電話をかけた。
 受話器を持ち上げると手のひらに思いがけなくズシリ、ときて、ああ、こんなに重たかったっけ、と奇妙な懐かしさを覚えた。
 あの頃。 
 あの娘に電話をかけるのに、自宅からではなんとなくはばかられて、小銭とテレフォンカードを持って毎日のようにいつもの電話ボックスまで走った。いつしか、保存用にと大事に保管していた貴重なテレフォンカードもあの娘との通話時間のために費やされた。

 そんな思いをして、最近電話ってしてないなあ。


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