のづ随想録 〜風をあつめて〜
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【のづ写日記 ADVANCE】

2002年03月23日(土)  成長

 この土日もフツーに出勤。滋賀での過酷な労働は続く。

 滋賀への出張もいよいよ1ヶ月を迎えた。この土地に来た頃はまだまだ本格的な寒さが続いていて、ほぼ毎日のように雪がちらつき、駐車場に停めた営業車のフロントガラスは毎朝しっかり凍り付いている、という極寒の日々だったのだが、俺自身がこの寒さに慣れてしまった、ということを差し引いても、確実に春は近づいていることを実感する。思えばつい先日の「本日の最高気温 −1℃」などは、冬将軍のラストスパートだったのかもしれない。凍える部屋にいるときも、ちょっと前までパジャマの下にトレーナーを着込み、厚手の靴下をがっちり履いていたが、今はトレーナーも靴下もさほど必要ない。日中も多少寒さが和らぐ日が続いている。
 確実に春は近づいている。
 そんな折、埼玉に残したツマから写真付きメールが俺のケータイに届いた。
『うちの一郎たちもこんなに大きくなりましたよ』――というような内容のメールに添えられた、大きくそしてたくましく育った我が家の一郎たちの画像。思わず頬をゆるめる俺。
 誤解のないように、さっさとオチを言ってしまうけれど、“一郎”とは今妻がベランダで育てているチューリップの芽の名前である。都合11個の球根が淡い緑色の芽を出した時点で俺は彼らを“一郎”“二郎”……と順番に名づけていた。「そんな名前はやめて」とツマは当初嫌がっていたくせに、最近ではツマの方から『一郎が……』というメールを送ってくる。
ツマの“弱い”ところのひとつがコレだ。俺のテキトーなネーミングを拒否しつつも結果的にすぐに受け入れてしまうところ。我が家ではさまざまな事柄やモノに名前をつけることがよくあって、例えばツマが実家から頭髪がツンツンしたぬいぐるみをもらってきたとき、風貌がどうみても「兵頭ゆき」にしか見えなかったそのぬいぐるみを、俺は『兵頭』と名づけた。真っ向からそのネーミングを否定していたツマだったが、いつのまにかそのぬいぐるみは『兵頭』で定着してしまった。
俺の健康を気遣って、ツマは俺の好物のひとつである“豚汁(とんじる)”を作るとき、時折豚肉を控えめにするときがある。
「今日は豚(とん)ぬき豚汁だよ」 とツマが言うのに対し、俺はすぐさま、
「それは“汁(じる)”だよ」と言った。ナンカ汚そうな感じでいやだ、とツマはその名前を否定したが、次にその“豚汁”が食卓に並ぶときはツマのほうから、
「今日は“汁(じる)”だよー」 と言ってしまうのだ。
―閑話休題―
もしかしたら俺の滋賀出張の間にチューリップの花が咲き終わってしまうかもしれない、という想いで俺は一郎たちと別れた。今日届いたケータイの荒い画像からも、緑色に力強さが増し、少しずつも大きくなっていることが伺えた。その画像を見た後、俺は訪問先へ向かう車の中で家へ電話をかけた。
「メールありがとう」
『うん、一郎たちも大きくなったでしょう?』
「奴らはどれくらい増えたの」
『今、八郎くらいかな』
 聞けば、4月から5月には一郎たちが赤や黄色に咲き誇ることだろう、とツマが自慢げに言った。
 なんとかこちらでの仕事をきっちりやっつけて、一郎たちが美しく花咲くのを我が家で見届けたいものだ。

 確実に春は近づいている。


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