「放出」と書いて大阪市内では「はなてん」と読むのだが、今回はそういうことが言いたいわけではない。 滋賀で出張生活を送っていた頃と比べるとやはり今の毎日は実に単調な日々である。営業車に乗ってそこここを走り回ってもいれば、ほんのわずかな風の薫りに季節を感じ、道ゆく子供や学生達に小さな羨ましさと懐かしさを覚えたりもする。そんな微妙な発見やココロの動きがこの“のづ随想録”の一遍を彩ったりもするのだ。俺はそうしたもの達を、忘れないように胸の奥底のほうに、あるいは自分の電子手帳にメモったりした。 しかししかし、こう毎日のように会社にカンヅメとなり、少なくとも楽しくは仕事をしていない今、俺のココロを少しでも揺り動かしてくれるものは少ない。まあ最近で言えば、東京ドームのモルツビール売りの女の子が健康的に可愛らしくて、今後ジャイアンツ戦を観戦するときはこの娘からビールを購入しよう、と固くココロに誓ったことくらいだろうか。 で、今日は、胸の奥底や電子手帳に残したメモをもとに、滋賀出張生活の中で俺のココロを刺激したもの達をいくつかここで紹介してしまおう。
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営業車を走らせていたときのこと。いつものように朝食をとらずに仕事に出掛けたのだが、何故かその日だけは朝から何故か妙な空腹感を覚えていた。だから、というわけではないかもしれないけれど、道路沿いのレストランや喫茶店の看板が妙に気になった。営業車はどんどん山奥方面へ向かっていて、そんな看板も少なくなっていったが、交差点の赤信号で停車していると、ふと、その角にかなり年季の入った、喫茶店とも食堂とも言えないような店構えの平屋が目に入った。まだ営業を開始している様子はなかったが、店の入り口のすぐ右側にちょっとした立て看板がしつらえられていた。そこには、この喫茶店とも食堂とも言えないような飲食店の“売り”が書かれているようだった。
『9:00〜11:00 モーニングセットあります 〜 鍋物、一品料理』
――いくら空腹だったとしても、朝からモーニングセットに鍋物を出されたくはない。俺はココロの奥で静かにそうツッコんだ。
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営業車から流れるラジオのCM。ときどきびっくりする内容のものがある。 それはきっと、「なんとか苑」とか「なんとかの森」とかいう名前の、要は老人ホームのCMだった。そのなかでは、夫婦を演じた若い男女が必要以上に弾んだ声で交互に喋っていた。
「最近、母さんが明るくなったと思わないか?」 「そうね、『○×ホーム』に入ってからホント楽しそう」 「きっと、“同年代の人が集まっている”から暮らしやすいんだよ」
――あたりまえだろう。同年代の人が集まっていない老人ホームってどんなんだよ。俺はココロの奥で静かにそうツッコんだ。
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……なんのことはない、いつもの小ネタ特集でした(こんなことをメモってるのかおまえは、というツッコミをお待ちしております)。
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