今、仕事で会社用のパンフレットを作っている。 約30頁にわたる、ちょっとした企業案内のようなもので、うちの会社の店舗開発の営業マンがそのパンフレットを営業用ツールとして活用するわけだ。 当然、プロの制作会社に協力を仰いでいるわけだが、特に社内や実際に営業をしている店舗の取材・撮影はその制作会社の仕切りに任せ、俺は必要に応じてOK、NGのジャッジをする、というような位置にいる。 こんな仕事をやっていると、プロカメラマンやライターさんなど、普段めったなことでは出会わないような人と一緒に仕事をすることになるので実に刺激的だ。 先月の末、東京→博多→福島、という罰ゲーム的出張取材を組んだ際に制作会社が連れてきたカメラマンは、ふだんはK-1などの格闘技の撮影を中心に行っている、という小柄で寡黙な男性だった。なにもそんなカメラマンを、たかだかちっぽけな企業パンフレットの撮影に連れてこなくても、と思ってそんな水を向けてみたのだが、彼は「いやあ、仕事ならどこでも行きますよ」と俺の目を見ずに照れ臭そうに笑った。 このカメラマン、最初はすこし取っ付きにくいタイプのように思えたが、少しずついろいろ話をするようになると、とても人間味のあることがわかってきた。スポーツ全般に詳しく、俺が今年のプロ野球の話をふると、「僕は、野茂とか、清原とか、石井浩郎とか、好きなんですよ。大体、パ・リーグしか見ません」と笑う。分かる人には分かるが、彼のチョイスには一貫性がある。高校時代の中村ノリを見に、地元の高校まで足を運んだこともあるという。俺の守備範囲外の格闘技の話を聞けば、それこそ撮影時のエピソードを静かに熱く話してくれた。「おれ、ベルナルドと友達なんですよ。あいつが日本に来たら、一緒にメシ食ったりするんです」 その罰ゲーム的出張取材に同行してくれたライターさんは、ひと月前に別の取材の時にも来てくれた女性で、女性向け生活情報誌を中心に活躍している、と制作会社のディレクターが言っていた。 初日の取材が終わって、博多駅前の居酒屋で軽く初日打上げ。俺に制作会社のディレクター、寡黙なカメラマンに女性ライターの総勢4人で、とりあえずお疲れ様の乾杯。俺としては滅多に遭遇することの無いメンツでの呑みだったので、かなり積極的にカメラマンとライターさんに話しかけた。 趣味とも言えないレベルで「のづ随想録」などというカタチで駄文を書き続けている俺としては、“書く”ことを生業としているライターさん自身が“書く”行為をどんなふうに考えているのか、ということがとても興味深かった。ライターさんは静かに煙草をくゆらせながら、「あくまでも仕事」と笑って言ったが、それは当然に俺の中でも想像していた答えだった。その答えに幻滅などしない。それは事実だ。僕もホームページみたいなところで日記らしき文章を書いたりしてるんですけど、なかなか難しいですね――と俺の本音をぶつけてみると、彼女はひっそりと笑って言った。 「でも、そんな風に、好きで、自由に書くことが、いちばん楽しいんだと思いますよ」 きっとそれは、その通りなのだろうな、と思った。
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