2004年01月12日(月) |
極寒のコリアン・レポート |
予定通り韓国出張に来ている。 今これを打ち込んでいるのは、ソウル市内のホテル。べつにココのネタを打ち込むためにパソコンを持ってきたんじゃないからね(それも大きな理由のひとつでもあるのだが)。事前にこの『GREEN GRASS HOTEL』をインターネットで調べたら一級のホテルという紹介だったので期待していたのだが、まあ、こんなもんだろうという広さ。アメニティは日本のほうが充実しているが、日本のうなぎの寝床のようなビジネスホテルの客室とはまあ一線を画する程度ではあるので、満足だ。 5時起き、8時半に上司と成田空港で待ち合わせというスケジュールから一日は始まった。成田空港はチェックイン手続き渡航客であふれかえっていた。久々の海外旅行(出張だよ、出張)でちょいとビビっていたのだが、チェックイン、手荷物検査、出国検査となんとか乗り切った。上司や同行の他部門の人たちとは出発ゲートで初めて顔を合わせる、というラフなスケジュールで、俺はツマに頼まれたDUTY FREE SHOPでランコムだのシャネルだのアルマーニだのという化粧品の買い物を終えて出発のDゲートに到着、程なくして上司と同行者がやって来た。 何もこんな時期を選ばなくって……と同情したくなるような修学旅行の高校生の集団を横目に見ようと思ったのだが、横目どころか彼らは俺と同じ飛行機で韓国まで行くようだった。日本では当たり前のように見かける女子高生のミニスカートだが、上司に言わせると、 「今、韓国って――どれくらい? マイナス5℃とか10℃になるでしょう。あの子達、死ぬぞ」 ちょちょちょちょちょちょちょちょっと待った。 マイナス5℃とか10℃だあ? 聞いてねーぞ、そんなに寒いなんて。俺はあんまり寒いとヒトとしての機能が停止するんだぞ。 我々と自殺行為のミニスカート女子高生たちを載せたJAL951便は、定刻どおり出発し定刻どおり韓国は仁川国際空港(“仁川”って韓国語でなんて読むんだろう)に到着した。 なるほど、マイナス10℃というのは大げさにしても、昨日まで温暖な四国にいた俺にとってはまさに地獄のような寒さが待っていた。おまけに、雪。吹雪。もう、どうにでもしてくれ、という気分に陥り、初の海外出張もかなり低いテンションからスタートした。 リムジンバスでソウル市内にある我が社のエリアフランチャイズ会社「普光FM」本部へ到着、早速この出張中のアテンドをしてくれる李室長、通訳も兼ねる徐課長と名刺交換。うひゃあ、海外のヒトと名刺交換するなんて初めてだあ、“李”だなんてまたベタな名前だなあ──などと俺らしく小さなところで感動したりツッコんだりしそうな場面なのだが、とにかくついさっきまでの寒さが俺の体の芯まで冷やしていて、俺のテンションはまだまだ低いところに位置していた。 そのまま我々一行は副社長室に案内され、これまた“李”副社長と名刺交換&握手。韓国の人は名刺交換のときにはきっちり握手をするようだ。そういえばさっきの李室長も握手を求めてきたっけ。その際に気づいたのだが、韓国の名詞というものは、タテが約3ミリ、ヨコが約1ミリ日本の名詞よりも小ぶりな縮小サイズのようだった。 約2時間、韓国ではナンバーワン・チェーンの座を確立している「普光FM」のその現状及び問題点といったあたりで李副社長にこちらから質問をぶつける形での面談。このあたりになってくるとようやく俺自身も仕事モードにスイッチオン、だんだん海外出張らしくなってきて、そんな状況で仕事をしている自分がちょっと不思議だった。 面談も無事終了、18:30から会食が予定されていた。待ち合わせ場所には「普光FM」の商品本部長兼理事の朴さんもやってきた。理事という肩書きの割には40代後半に見えるやや男前系。我々は彼らが用意している韓国料理店に向かって歩き出した。ふと、“商品本部長兼理事”を我々と一緒に吹雪の中を歩かせている先方のアテンドの理解に苦しんだ。これが日本だったら、ましてや海外からの客人を迎えているということであれば車の手配だナンだと余計な気を回すところなのだろう。 案内された店は韓国風居酒屋、といった風情の掘りごたつの店だった。軽くビールで乾杯した後、日本語の話せる李室長や徐係長を中心に一気に場は和んでいった。 副社長との面談のときにも感じたのだが、やはり想像していた通り韓国のヒトは熱い。彼らは苦難の時期を経て、数年で韓国内ナンバーワン・チェーンに自分たちの会社を成長させたというその自信にも満ち溢れていて、上司に言わせればそれはまさに“日本国内のナンバーワン・チェーン”に本気で追いつき追い越せと励んでいた15、6年前の我が社の姿に似ているらしい。ガンガン成長し続ける会社で仕事をするのは、苦労が苦労とは思えないもんだよ、と同行の先輩社員が言った。 コース料理のようにいろいろな料理が次々と目の前に並べられるのでつい油断していたが、どこかのタイミングでさらっと登場したキムチが辛いの辛くないのどっちなんだ、というくらい辛かった。さすがは本場、オモニじの味だ。元来、辛いものがかなり苦手な俺に「あ、そんなに辛くないじゃん」と油断させておいて、数秒後からじわじわひりひりとかなり腰の据わった辛さが口の中に広がっていくという細菌兵器のような恐ろしさだ。これはやはり、キムチ好きな人にはたまらないのだろうなあ。ツマに買って帰らなきゃ。 会食も終え、日本側の我々はホテルに帰って本日の面談のまとめを行い、解散となった。 案内された店での食事はどちらかというと“呑み”に近かったので、小腹がすいてしまった俺は、報告書を1時間程度でまとめ終えて、ホテルの近くのFMへ買い物に行った。ホテルの近所にはアヤシげな食堂があるにはあって、ナニがなんだかわからないまま注文するという冒険食事を実施しても良かったのだが、さすがに時間も時間だったので、却下。FMではおにぎりと韓国カップ麺を購入した。1,500ウォン。日本円にするには“0”をひとつ取るくらいだ、と教わっていたので、150円くらいか。安い。 しかし、このおにぎりもまた曲者であった。24時近かった、というのは我々“プロ”に対しては言い訳にならないまでも仕方がないとして、おにぎりが2種類10個程度しかケースに並んでいなくてほとんど選択の余地なし。俺はパッケージからしてあまり辛そうでないものをチョイスした。巻かれている海苔は当然といえば当然なのか振り塩のしてある“韓国海苔”であった。 これがまた、辛い。海苔は旨いんだけど、とにかく辛い。だから、俺は辛いのが苦手なんだってば。 明日以降の食事が思いやられる韓国の初日である。
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