のづ随想録 〜風をあつめて〜
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【のづ写日記 ADVANCE】

2004年02月08日(日) あなたもタラソテるといいです

 先週の予告どおり、今日は「マーレ・グラッシア大三島」へ行ってきました。なんだそれ、と思った人は先週の更新を読み返すように。残りの松山出張生活は温泉を満喫してしまおう計画第2弾であります。
 ちょいと寝坊をして、部屋を出発したのが10時半。コンビニでおにぎりとカテキン茶を買って、松山市内から、同じ愛媛県といえども瀬戸内海に浮かぶ島々のひとつ、大三島まで高速ぶっ飛ばして行ってきました。
 今回の目的地「マーレ・グラッシア大三島」は最近ちょっと耳にするようになったタラソテラピー(海洋療法)を取り入れたことで県内でもちょっと注目されている温泉施設のようである。実際テレビCMなんかもやっているので、それなりに有名なんだな、きっと。
 『西側の海に面している瀬戸内海を眺めながら露天風呂につかろう』
 という愛媛県温泉ガイドブックの謳い文句を目にしたら、これはもう行かなければならないでしょう。沖合いから取水した海水をそのまま沸かしたミネラルたっぷりの「海水風呂」も、なんか日々かなり偏った食生活を送っている自分には意味もなく健康そうでいいじゃないですか。「タラソテラピー」というと、頭と胸のあたりまでピンクのタオルを巻いて、海藻なんかで作ったジェルだかなんだかみたいなものを体全体に塗りたくる、というようなイメージがあるが、すくなくともここ「マーレ・グラッシア大三島」では“海水を沸かしたお風呂”というあたりで、その謳い文句に「タラソテラピー」を用いているようだ。俺のように思いつきでふらりと訪れる客に、そう簡単にタラソテラれても困るのだろうか。よく分からないが。

 お気に入りのCDを積み込んでドライブ気分で高速を飛ばす。抜けるような青空が広がり、気分がいい。
 事前にしっかり道程を調べなかった俺に問題があるのだが、目的地の大三島までは結構な距離だった。当然、瀬戸内海に浮かぶ島まで車で向かおうというのだから、それを連絡する高速道路の通行料もこれがびっくりするような値段だったり。大三島までは『しまなみ海道』という高速道路を往くのであるが、なんと途中は一度一般道に降りて、また高速に乗る、ということをしなければならない。ここまで来て引き返せるか──だんだん、そんな意固地な気分にもなってきた。




 なんとか大三島ICを降り、目的地まではもうすぐ。腹も減ってきたので、ここはなにか旨いものを。やはり瀬戸内海の島まで来ているんだから吉野屋の牛丼ってわけにはいかないので(当然、そんなものはないのだが)、愛媛県の郷土料理のひとつでもある『鯛めし』をやっつけてしまおうじゃないか、ということになる。
 大型観光バスも何台か駐車しているのが見えた「瀬戸内茶屋」というドライブイン的休憩所に立ち寄ることにした。食堂の入り口にはでかでかと鯛めしをアピールする看板がある。よしよし。
 食堂の客はほとんどがツアーや家族連れの団体ばかりだったが、程よく空席もあったので俺一人がテーブルについてもさほどサビシ感はなかった。メニューに一通り目を通し、すかさず「鯛めし御膳1,050円」を注文。こういう昼下がりのビールは、それはそれで旨いのだがここは当然我慢である。周りのグループ客がぐいぐいとビールジョッキを飲み干しているのを羨ましく眺めている頃に、俺の「鯛めし御膳」が運ばれてきた。




 旨そうでしょう。旨かったですよ、実際。最近、ラーメンだのチャーハンだの唐揚げだのカレーライスだのというB級な食事しかしていなかったので、あっさりと優しく出汁がしみ込む鯛めしとワカメのお吸い物が体全体に行き渡るようだった。小鉢に添えられていたタコの酢漬けもしみじみと旨い。瀬戸内のタコも名物のようですな。
 売店で思いつくままにお土産を買い込む。非常にそそられるアイテムもあったのだけれど、そんなものを買ってどうするんだというツマや友人達の誹りが聞こえたような気がして、涙を飲んで再び車に乗り込んだ。




 「瀬戸内茶屋」から5分と走らないところに「マーレ・グラッシア大三島」はありました。
 この温泉施設は、隣があの有名な「伯方の塩」の工場になっているようで、このへんにもどうも「タラソテラピー」を謳い文句にする背景が見え隠れしているような気がした。
 細かいことは気にせずに、500円の入浴料を払って、海水風呂にどぼん。ひゃー、気持ちいい……と湯で顔を拭えば、確かに塩気がする。ちょっと塩の味がするかな、という程度ではないのがびっくりだ。
 落ち着いて浴場内を見回してみると、それほど大きな風呂がたくさんあるというわけではない。洗い場はちゃんとあるけれど隣との仕切りがないので、シャワーを使うときにちょっと気を遣うなあ。海水風呂、サウナに水風呂、ジェットバスに日替わり湯と種類も少ない。ベランダのような屋外に出ると、展望風呂と歩行湯、ジェットバスがあるのだが、なんといっても展望風呂が今日のメインイベントだ。
 相変わらず天気はいいけれど、風がめっきり冷たい。青空を流れる雲もかなり急ぎ足になっている。そんな寒風を頬と両肩に受けながら、展望風呂からは絶景の瀬戸内海が望めるのだ。




 程よく温めの湯船に浸かりながら、緑色にさざめく静かな瀬戸内の海に島々、青い空、すこしずつ形を変えていく白い雲をぼんやりと眺める。展望風呂から50mも離れていないところにはもう小さな波が寄せていた。少し頭をめぐらせると、まだまだ高い位置で粘っている太陽が銀色に海を照らしていた。
 時折目をつぶって、湯船に(溺れないようにしながら)ねそべってみたりする。頬を突き刺す海風が少しだけ心地よい。その時、自分が何を考えていたのか思い出そうとしたのだけれど、頭に浮かぶのはやはり穏やかな緑と青と白だけだ。2時間近く風呂に居たけれど、その半分はこの展望風呂でぼーっとしてた。何も考えずに心の底リラックスできたのは、やはり海のおかげだろうか。これもきっと「タラソテラピー」なのかもしれないなあ。

 風呂上りはいつものようにコーヒー牛乳。レストランが休憩中になってしまってソフトクリームが食べられなかったのはハゲシく心残りだったが、保温効果のある海水風呂のおかげなのか、じっくり温まった体で車に乗り込むと、すこしだけ眠気を感じた。このまま、しばらく車の中で昼寝なんかしたら最高だろうなあ、と思ったけれど、来た道を戻る距離を考えるとそんな時間もなかった。


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