のづ随想録 〜風をあつめて〜
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【のづ写日記 ADVANCE】

2004年02月29日(日) とりあえず、帰還

 松山出張生活が終わった。
 今週は期末ということや新規開店店舗が集中したこと、そして俺がひとまず松山でのオツトメを終える、ということなどいろいろなことが重なってかなり忙しかった。業務の引き継ぎは殆ど出来ていない状況なので、恐らく3月にも2度3度は松山へ行かざるを得ないことになるだろう。ま、それはそれで大歓迎だ。なにしろ、松山での3ヶ月に俺はとうとう松山城にも道後温泉にも足を運ぶことが出来なかった。ココでもなんとかして行くぞ的な決意表明をして自分自身にもプレッシャーを与えたつもりだったが、結局忙しごっこには勝てず、おめおめと所沢に帰ることとなった。
 明日からは3ヶ月振りの本社出勤となる。

 今朝はちょっとだけ早起きをして部屋を撤収する準備から始まった。昨晩も3月から俺と入れ違いのカタチで松山に赴任する先輩社員とじっくり飲み明かしてしまったので、実はまったく帰り支度が出来ていなかった。帰路の飛行機はすでに予約してしまっているし、ツマもそれに合わせて夕食の準備をしてくれている。今日ばかりはきっちりと時間どおりに飛行機に飛び乗らねばならない。宅急便のおにいさんが集配に来る時間までにはなんとか荷物を段ボール2箱に押し込んで、まずはひと段落。最後の保存食であったカップラーメンを軽くすすり、タクシーで松山空港へ。会社や自宅へ土産物を選んでいたらすっかり時間を喰ってしまって、息を付く暇もなく予定どおりの飛行機に乗り込んだ。
 羽田空港からは自宅最寄り駅への直行リムジンバス。荷物を引きずってのモノレール、山手線などの乗り継ぎはかなり面倒なので、ちょっと割高だがこのほうがずっと楽なのだ。日曜日の夕刻の首都高および関越道は特に大きな渋滞があるわけでもなく、きっちり定刻通りに到着した。
「お帰りなさい。お疲れさまでした」
 食事の支度の途中のツマが玄関で迎えてくれた。
 土産をツマに渡し、着替えていると唐突にツマが言った。
「オット、驚かないでね」
「?」
「実はね、工藤が骨折しちゃったの」
「なにぃ!」
 最近の忙しさでスポーツニュースをしっかり見ていなかったが、そんなことが起きていたのか! 
 工藤公康。我がジャイアンツ投手陣の精神的支柱であり、貴重な左腕のひとりだ。工藤の怪我がジャイアンツ投手陣に与える影響は決して小さくない。その彼がオープン戦開始直前のこの時期に骨折とは!
「どんな状態なの?」俺はネクタイを解く手を止めてツマを見遣った。
「左足首骨折。ぽっきりと」
 そう言ってツマは立ち上がると、本棚の上の『ジャイアンツ選手フィギュア』に手を伸ばした。そこには、昨年コンビニで買い揃えた、上原・清水・二岡・真田、そして工藤の『ジャイアンツ選手フィギュア』が並べられているのだ。俺の宝と言っていい。そしてツマはそっと工藤のフィギュアを手にした。
「見て、オット」
「……」
「こないだ、掃除をしているときにハタキをかけていたら、つい“工藤”を落っことしちゃって――」
 見れば、その特徴ある投球フォームが再現された工藤の軸足である左足の足首から、まさに“ぽっきり”と折れてしまっているのだ。
「ひどい骨折だね、こりゃ。今シーズンは絶望的だ」
 家に帰ってきた、そう俺は実感した。


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