のづ随想録 〜風をあつめて〜
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【のづ写日記 ADVANCE】

2004年06月14日(月) ココロ穏やかなる一日

 昨日の日曜日をどう過ごしたかって話なんですけど。

 8時15分起床。どちらかというと“ぼわーん”と目が覚めた、と言う表現が正しい。
 ベッドの中でぼんやりと徳光さんの番組を眺めていた。ちょうどベッドとは反対側にある窓からかなり威勢のいい陽光が差し込んでいる。
「──そうだ、朝の日本海を眺めに行こう」
 こういうのはタイミングと勢いです。結婚と同じ。ふと、そんな気分になった俺はさささっと着替えて、デジカメを入れたバッグを肩に部屋を飛び出した。吸い込まれるような青空。とても気持ちがいい。すぐさま車に乗り込み、鳥取砂丘へ向かったわけで。
 誰もいない鳥取砂丘で青空の下の日本海を独り占め──なんて考えていたのだけれど、さすがにそううまくもいかず、そこそこの観光客や地元の人々が早くも砂丘の天辺から日本海を眺めているようだった。
 砂丘入り口から、砂に足元を取られながら1キロも歩くとちょうど小高い丘の上にたどり着く。この日は最近まで続いた雨を含んでいるせいか、思ったよりも楽に歩みを進めることが出来た。
 丘の上は思っていたよりも風が強く冷たくも感じたが、それでもこの青空と日本海の青が目の前にこれでもかと言うくらいに広がっているのを目の当たりにすれば、こんな贅沢な風景はそうは味わえないものだと思った。時刻にしてまだ9時半。これは素敵な日曜日の始まりのような気がするぞ。








 下界(?)に降り、部屋の近くのファミレスで朝定食をいただく。滅多なことでは朝食など採らない俺だが、充実の一日を予感させる何かが俺を空腹にさせたのか。
 事務所に立ち寄り、いくつかの仕事を整理した後、大型電気店めぐり。そろそろ自宅用パソコンも買い換えたいところなのでその勉強に。このままだと本当に「ジャパネットタカタ」で購入してしまいそうだからな。アレは、俺みたいな素人が買う分には十分のような気がしてしまうから困る。
 本屋、レンタルビデオとハシゴして、いったん部屋に戻った。これまでその存在は確認していたけれど、なかなか足を運んでみる気になれなかった「砂丘温泉 ふれあい会館」に行くための準備だ。
 ここは鳥取砂丘がある福部村の、砂丘に沸く温泉を利用した公営の入浴施設。ガイドブックによれば『鳥取砂丘にほど近く、ガラス張りの大浴場からは目の前に広がる日本海を楽しむことが出来る』らしい。
 へへへ、こんなにいい天気なんだ。昼間っから温泉に浸かって日本海を眺めるなんて贅沢、やらなきゃ損でしょう。コーヒー牛乳もさぞや美味いだろう。
 400円の入館料を払って、早速大浴場へ。正直なところ、そこは“大浴場”ではなく“小浴場”程度の大きさしかなく、他に小さなサウナと人ひとりが入れるくらいの水風呂があるくらいのこじんまりとした温泉であったが、ガイドブックにあったガラスの向こうの日本海は本当だった。パノラマに広がる日本海を眺めながら温泉に浸かる──人生のヨロコビはここにあり、という気分だ。
 湯船に腰掛け、白い波を見ながら俺はふと思いついた。この砂丘温泉が本日のメインイベントのつもりだったが、もっと素敵なことができるぞ。
 それから俺は徹底的に体を温めた。温泉→サウナ→温泉、という水風呂禁止攻撃を3セット繰り返し、身体熱々ノド乾々状態に陥れた。
「さあて、行くぞう」
 俺はすぐさま浴場を出て、身体を冷ますことなく洋服に着替え、握り締めた100円でコーヒー牛乳を購入。そのまま車に乗り込み、一気に走らせた。
 行き先は、鳥取砂丘海岸。もうすぐ、海水浴客で賑わうだろう大きな砂浜は今はまだ人影は少なく、俺はそこで熱々の身体に心地よい潮風を浴びながらコーヒー牛乳を一気飲み、という作戦に出たのだ。

 もう、最高。

 波が砂浜に腰掛けた俺のすぐ足元近くまで寄せては返す。頬を打つ潮風がなんとも心地よい。この瞬間にコーヒー牛乳を飲むシアワセ。そして、不定期に繰り返される波の音が日常の雑多なことを忘れさせてくれるようだった。
「さてと……」
 俺はバッグから文庫本を取り出した。午前中に立ち寄った本屋で買った一冊だ。潮風と陽光の中で穏やかに本を読む。最高でしょ。










■『解夏』 さだまさし (幻冬舎文庫)
「テレビも見ていない私ですが──」と、大学時代のかわいい後輩 I が薦めてくれたのは、手にするタイミングを逸していたさだまさしの小説だった。映画にもなったりしているので、皆さんご存知でしょう。
 視力を徐々に失っていくという病に冒された隆之は、仕事を辞め、故郷の長崎に戻った。ある日、東京に残した恋人の陽子がやってきてこう言う。「長崎に住むわ」
 病が進行する恐怖と対峙する孝之とそれを支える陽子。ある日ふたりは出会ったお寺の老人から『解夏(げげ)』の話を聞いた。
 波のBGMもいつしか聞こえなくなるくらいに、素直にココロに沁みてくるいい作品でありました。ひさしぶりにさだまさしの作品を読んだ。なにより、大学の後輩から“さだまさしの作品を薦められる”という事実が嬉しいんだか、ちょっと悔しいんだか。
 ありがとうよ、 I 。


 青空と日本海を眺め、温泉に入って、砂浜で文庫本を読む。バチがあたりそうに満喫してしまった日曜日でありました。
(夕食にふらりと入ったラーメン屋がなんと阪神グッズでいっぱい、なんてケチがついたけど、それはまた別のお話)


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