皇帝の日記 
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イサムさんがお兄ちゃんになった事を理解しているのかどうかと言うのは、実に疑わしいのですが。
  なんせいまだに1単語以上の文章を作ってくれた事がないので、彼が何を考え、思っているのかは彼の頭の中だけで完結しているのだ。 我々とはわかちあってくれていない。
  産まれるちょっと前に、お腹を指差しながら「ベイビー」と言っていたので、一応赤子が入っている事はわかっているのかな?と思ったが、その後も容赦なく腹の上に乗って来てたので、本当のところ良くわからんのだよ。
  ほんで入院中。 幼児の面会はできないと言っていた病院だけれど、父親の付き添いがあれば短時間オッケーだということが判明したので、ほんの少しだけ病室に来てくれた。 が、怖がってアユミさんに触れようとしないイサムさん。 うーん、この反応は・・・猫らが初めて来た時と一緒。 なんとなく遠巻きに眺めています。 そして、アユミさんを見ながら、指を口に当てて「しー」と言ってみたり。
  結局、病室でグランマが買ってくれたクロワッサンをわっしわっし食べて、パン皮を盛大にボロボロ床とベッドにこぼして去って行ったのでありました。 グランマ・・・そこでのチョイスは、食パンかロールパンあたりが良かったのでは・・・。
  家にアユミさんが来ても、なかなか見に来ないイサムさん。 何だと思っているんだろうね? まあ我が家は、義弟夫婦が来たり猫らが来たり犬が来たり。 次々色んな生き物がやって来るなあ、と思っているのかも知れない。
  そんなある時、アユミさんを指差して「ベイビー!」と言ったイサムさん。 おお。 そうだよ!この人が腹に入っていた人だよ! ヘレン・ケラーの「ウォーター!」に匹敵する興奮。 よくわかったねー、えらいねー、と褒め讃えたので、その後しばらく何かある毎に「ベイビー!ごにょごにょ」となんとなく文章を組み立てようとしていたイサムさん。
  ストローラーを押しながらウロウロしていたら、廊下を塞いでいた木のスツールを、無言でどかしてくれたり。 哺乳している部屋をそっと覗きに来たり。 少しずつ、ベイビーはどうやらずっと我が家に居るんだと理解してくれてそうなイサムさん。
  ほんで昨晩。 イサムさんの寝付きが悪いので、ジャバ夫さんに頼んでイサム部屋で二人寝をしていてもらったのだが。 散々ぐずった後「ベイビー!!わあああああ」と泣きながら寝室を脱走して廊下を走って行ったイサムさん。 産前だったら我等夫婦の部屋に来てぐずっていたのに、私と赤子が寝ているのがわかっているからか、こちらへは駆け込んで来ない。
  母はウルッとしてしまいましたよ。 残念ながら、君の泣き声はばっちり壁を越えて聞こえまくっていたけれど、イサムさんなりに「お母さんに迷惑をかけちゃいけない」と思っているのでしょうか。 廊下で散々泣いてから、何故かゲストベッドルームで寝たそうです。
  イサムさん平気そうだったけど、やっぱり急に赤ちゃんが来て、なんか思うところがあるのでしょう。 強くあれ、兄ちゃん。
  とりあえず医者によると、6週間は母はイサムさんを持ち上げられないので、6週間後には思い切りイサムさんとサシで遊んであげようと思っている。
 
  
皇帝
 
 
   
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