雑感
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2001年11月19日(月) ベネチアの魅力

ウィーン南駅22時28分発の寝台列車は翌朝8時38分にベネチア
サンタルチア駅に滑り込む。

乗り換えの要所ベネチアメストレ駅ではベネチアに来た!という感じが
まだ薄いけれど、さらに15分ほど海に向かって列車が進むにつれて
アドリア海の匂いがきつくなる。駅を抜けると運河が広がって、何か
変だなということに気づく。至るところボートやゴンドラだらけで、
車が走っていないという単純な事実に気がつくには30秒くらいかかる
かもしれない。アルプスを初めて越えた者にとっては、列車をおりた
とたん海が飛びこんでくるのだから。

アドリア海沿岸の一海洋都市がどうして世界中の観光客を引きつける
のだろうか。近くにはウィーンの匂いのするトリエステ、対岸には
イストリア半島のコパーやプーラなど美しい海岸線を持つ港がある
のに。
観光客でごったがえしていようとも、サンタルチア駅からリアルト橋を
渡りよくわからない小路をくねくね歩いていくと、自分がどの時代にいる
のかわからなくなってしまう。どんなに迷ってもしまいにはサンマルコ
広場に着いてしまう。細い路地と路地は小さな石段でつながり、バリア
フリーを提唱するには最悪の街である。車椅子や杖の必要な人は苦労する。
スロープをつける気もなさそうで、野菜いっぱい積んだリヤカーを必死で
引き揚げている男を見た。

ベネチアは十字軍以降16世紀までヨーロッパ、すなわち世界をまた
にかけた交易で潤った共和国だった。世界中の富がこの都市に流れこみ
独自の文化を開花させた。塩野七生の「海の都の物語」に詳しく書かれて
いる。
ベネチア在住の英国人作家ドナ・レオンのミステリーはベネチアを舞台に
したブルネッティ警部シリーズが有名で、小説のかしこにベネチアの小さな
バールやレストランの名前が登場し、有名なホテルの名前などを耳にする
と何だか嬉しくなる。

昨日見つけた本「ベネツィアの宿」(須賀敦子著)に著者がホテルの
小窓を開けるとフェニーツェ座のオペラのアリアと観客の咳払いの音が
飛びこんで、心を奪われたというくだりがあった。

1度訪れたことのある人なら、次に行くときはカーニバルのシーズンに
合わせることをお薦めする。街中、独特の仮面とマントをつけた人々が
練り歩き不思議な雰囲気を醸し出す。どんちゃん騒ぎと憂いが半々混ざっ
たよう。

イタリアといえば、明るい太陽、マンジャーレ、カンターレのネアカの
イメージを持つ人が多いけれど、北部ベネト州は少し冷静な匂いがする。
アルプスから吹いてくる冷たい風のせいかもしれない。



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