雑感
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十数年来お世話になっている家族から夕食の招待があったので 喜んで出かけた。少し離れたところに住んでいるが、毎年一度は集うよう に心がけている。 クラプフェンバウアー夫婦は3年ほど前から年金生活に入り、90歳に なるおばあちゃんと3人暮らし。かなりの資産家なのに、生活ぶりは 質素で、でもけちというわけではなく、自然体での暮らすさまは見習う べき点が多い。
夕餉も、サラダ2種とヴィーナー・シュニッツェルとデザートと普段の 食卓と変わりないが、話題が豊富で十分肴にして楽しめた。この家族と 話を始めると、長丁場になる。旅先でのこと、音楽のこと、日本の芸術 のこと、政治・経済と多岐にわたって本当に楽しい。常識的なウィーン人 の意見を忌憚なく披露してくれる。この家族の居間に座っていると、普段 の気を張っている生活から離れ、一種の温みのようなものをじかに感じる ので、長居をしてしまうのだろう。
おばあちゃんは、年々弱っているように見うけられるので、またこの次 ねと念を押しても、次回会えるかどうかわからないなと思い、きつく 握手してきた。
帰り道、美しいお月さまを眺める。18夜か19夜くらいか。上側から 欠け始めていたが、射す光は強くて、零下の冬空をきりりとひきしめる。 空には満天の星。シェリーとワインとシャンパンを飲みすぎた頭には 心地よい冷たさだった。
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