雑感
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映画館に1901年当時のマリアヒルファー通りの写真が飾って あった。この映画館のあたりから、リングへ向かって撮った風景写真。 白黒だけど、いまはお化粧直しされたシュティフト教会や数年前まで あったヘルツマンスキー百貨店の名前が見える。
男はステッキに黒い山高帽、女性はひだのたっぷりある黒っぽいロング スカートに提灯そでの白いブラウスに日傘、つばの広い帽子姿。 路面電車も旧式の一両編成が走っている。石畳の舗装。今は跡形もなく 消えてしまったが、1986年春、初めてウィーンに来たときの雰囲気、 建物の感じはそのまま残っている。
100年前も16年前と遜色なく、同じように買い物客で賑わっていた のだなと写真の瞬間へ邂逅していくような感じがする。 でも写真の人々は今は誰一人生存していない。2,3歳のかわいらしい 幼女もこの世の人ではない。 この感じは、天井の高いカフェに座って新聞を読みながら、ちらりと 外、王宮を見たときもあった。過去と未来のメビウスの環の上を今と いう時間がすべっているようだ。この環の上では、自分の中のどうにも しかたない空洞のようなものは雲散霧消していく。
肝心の映画よりも、壁一面に飾られた1901年のウィーンの風景に 釘付けになった。
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