雑感
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| 2002年01月15日(火) |
ハイリゲンシュタットの小道 |
ベートーベンが遺書を書いた家、ベートーベンハウスはハイリゲン シュタットに、ウィーン19区の閑静なお屋敷街にある。
今にも小雪がちらつきそうな中、スロバキア大使館へ用事で出かけた。 賑やかな、グリンツィングのホイリゲを抜けた、森近く。 バス停までの行き帰り、ベートーベンハウスのすぐ傍をとおる。 名所旧跡の印の、オーストリア国旗がひらひらと門にかかって 揺れている。
しばらく時間があったので、ベートーベンの小道まで歩いてみた。 小川に沿って、細長い道がえんえんと続いている。きりりと引き締まる ような寒さの中、散歩する人影は見えない。
目を閉じると、交響曲「田園」のメロディが聞こえてきそうだ。 200年の歳月を邂逅してみると、あたりは葡萄畑に小川が流れ、視界を さえぎるものは何もなかったに違いない。聞こえない耳で、毎日作曲して 疲れたあと、同じ道を散歩していたはず。
どんよりした冬空の日曜日、外に出たくない日。ワンパターンな生活を 送っているとはたして自分の生きる意味なんてあるのかなと考え込んで しまう。そんな気分のとき、ベートーベンの交響曲はずいぶんと力に なってくれる。調子のいいときは、敬遠するくせに。
幸い、自分は目が見えて、音が聞こえ、風や雨の匂い、寒いと感じる 感覚がある。 さあ、仕事に戻ろうと、踵を返すと、灰色の空から粉雪が ひらりと落ちてきた。
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