雑感
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2002年01月22日(火) それを言っちゃあおしまい

チェコで操業を始めた原発をめぐり、チェコとオーストリア関係が
相当揺れてきている。昨年来、2国間の大きな問題で、道路閉鎖やデモは
日常茶飯事だったけど、先週のチェコのゼーマン首相の発言で一気に
賑やかになってきた。

このテメリン原発は、オーストリア国境からわずか、60キロしか離れて
なくて、臨界事故でも起これば、オーストリアも相当な被害を被るので
国民も政府も大きな関心を寄せてきた。
欧州の原発の建築マニュアルには、きっと基本ルールがあって、できる
限り首都から離れたところや国境ぎりぎりに建設すべしと載っているの
ではと思うほど、ルールに忠実に建設されている。

先週、チェコの首相は、オーストリア連立政権の右派の前党首ハイダー氏
のことを、ナチシンパの大衆煽動家と名指したばかりか、さらに
オーストリアはナチの被害者ではなく、同盟国であったと言いきって
しまったので、事態がややこしくなってきた。

オーストリア国民の半分くらいは、ハイダー氏のことを、口には出さない
けれど、そう思っているが、オーストリアがナチの同盟国であったと
聞いて、冷静ではいられない。
オーストリアもまだ完全に第二次大戦の総括を終えてはいないので、
触れられると、とても痛いところである。

自分の子供のことを、「ばか息子ですが・・」とへりくだって言う人は
いるかもしれないけど、日頃よく思っていない隣人から、「あんたの
息子はばかだね。」なんて言われたら、「そんなこと言われる筋合い
はない!」って思うのが人情である。さらに、「あんたとこの先代は、
ひどかった!」と、言われたらかえって仲の悪い家族でも団結して、
外からの攻撃に立ち向かおうとするものだ。ゼーマン首相、大失言
だと思う。古傷をつついて、ろくなことはない。

右派の自由党は、こういう攻撃を、上手く利用して、国民のコンセンサス
をまとめるのはお家芸。問題をは、国民投票の実施にまで、さらに、
チェコのEU加入を阻止するところまで行きつつある。

歴史的、経済的な観点から見て、オーストリア人はチェコ人のことを
対等のパートナーだとは思っていない。かつてのハプスブルク帝国領で、
経済的にも劣ってきた国に、真っ向から悪口を言われては黙っては
いられないのだろう。陸続きの国境について考えさせられた出来事
だった。


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