雑感
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2002年02月08日(金) 宴のあとで

昨夜の舞踏会は終わった。

6万本のバラはしおれ、音楽は鳴り止み、人々は三々五々ともとの
場所に戻る。遅めの午前中、昨夜のVanity Fairの小道具がオペラハウス
の横に粗大ゴミのように朝日に照っている。

何だかすべてが夢から覚めたような感じ。オペラハウスの中は
華やかな人々が数時間前まで確かにいたはずなのに、今は跡形もなく
消えてしまった。今晩の出し物「トスカ」の舞台を作るために、大勢の
大工がせっせと働いている。
ホテル前に停まっていた雪のようなキャデラックはどこに行ったのか、
何千という豪奢なイブニングドレスは役目を終えて、クローゼットの隅
っこにしまわれるのだろうか。

壮大な舞台装置が一夜にして消えてしまうのを見ていると、ひとの生き方
も、大きな計算尺で計ったら、線香花火のようなものなのかとふと思った。
どんなに豪華な舞台を作り上げても、それは限定的なもので、ずっと
形をとどめておけるわけではない。
楽しくてもつらくても、宝石をいっぱい持っていても、何も持たずとも
時は過ぎていく。

虚飾に満ちたものの裏側はなるべく見ないほうがいいなと、今朝の
オペラハウスを眺めてため息をついた。



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