- different corner -
DiaryINDEX|past|will
久しぶりにリアルな夢を見た。 しかも三本立て。 布団から手を伸ばして時計を手にとり、 まだ起きる時間じゃないことを確認した。
夢の中でくらい幸せでいたいのに、 なぜか私は追いかけられてたり、 自分で自分を追い詰めている夢が多い。
ときどき水滴が落ちる音がする。 雨でも降っていたのだろうか?
一本目。
私はある人に追いかけられていた。 必死で走り回り、どこかの酒場の奧の部屋に逃げ込んだ。 扉のむこうで、その人が叫んでいた。
「こっちにこい!」
「いや」
「抱きしめてやるから、こっちにこい!」
「いや!」
「そうしてほしいんだろ!」
「違う!」
その人はやがて、私が扉をあける気がないのを見て、 扉のむこうから遠ざかっていった。 私は、その人がいなくなったのを感じ、軽くとん、と扉を押した。 鍵はかかっていなかったし、ほんの少し押せば扉は開いたのだ。 私はもう一度扉をしめて、今度は鍵をかけた。
……なんて赤面な夢をみてるんだ、私。 夢の中なんだからだっこしてもらえばいいのに。 でもその時は、そうしたら相手が死んでしまうと思えたのだ。
二本目。
真っ白い部屋に、こたつが一つ。 そこには、新聞を読んで座っている先客がいた。
私は彼の隣に座り、ストップウォッチを手にとった。 するとその人は、
「二分間ですので、よろしく」と 新聞から目を離さずに言った。
私はスタートボタンを押すと同時に、 下をむいて泣こうとした。
するとその人は、新聞から目をあげて、 私にティッシュを箱ごと渡した。 涙は出ていないのだけど、鼻はでて、 声も涙声になった。
「どうして、こうなっちゃうんでしょうか」
私がそういうと、
「どうしようもないんですよ」
と彼は言った。
「もう何もできないんですか」
「どうしようもないんですよ」
彼は悲しそうに私をみて、私は残りの時間を ただ鼻をかむことだけに費やした。
……なんじゃこりゃ。(^^;
三本目。
暴風雨の日、私は薄暗い部屋の一室に座っていた。 窓の外はすごい天気なのに、音は一つも聞こえない。 部屋はほとんどからっぽで、 すみっこに一組の布団が無造作に敷かれていた。
扉をあけるとたくさんの人達が「帰る」準備をしていて、 中には私の両親もいた。 よくみると、そこにいたのは親戚の人たちばかりだった。 彼らに声をかけてみるけれどみんなぴくりともせず、 ただ静かに帰る準備をして次々と帰っていった。
どうやら、誰かの葬式が終わったあとのようだ。 すると、寝ている人は誰なんだろうか。
私がおそるおそる布団をめくると、そこには誰もいなかった。 しかし、その布団を見て気づいた。
これは私の布団だ。
……これは私の葬式だったのか。 どおりで、誰もこっちを振り向かないわけだ。
今の姓のままでは死にたくない。 自分の家の墓にははいりたくない。 両親に自分の死体にふれてほしくない。
これがのぞみだったはずなのに、 一番望んでいない最期を迎えたわけだ。 私らしいや。
布団には、ほんの少しだけ温かさが残っていた。
やっと、誰にも評価されずにすむんだ。 やっと、誰のことも求めずにすむんだ。 やっと、眠れるんだ。。。
私が布団に横たわると同時に布団は消え、 部屋の中には何もなくなった。 私は、誰とも言葉を交わせなくなったかわりに、 自分の家の隅っこで静かに眠る権利を得たのだ。 悲しいけれど、すごく幸せだ。
……
目覚めて夢の内容を反芻していた私は、 少し早いけどそろそろ起きることにした。 目を覚まそうと軽く顔の上半分に手をあてると、あることに気づいた。
さっきからやまない水滴の音は、 私の目からあふれている涙が頬を伝い、 まくらに落ちている音だった。
これは、いつの夢の時の涙なんだろう。 考えてみたけれど、わかるはずもなかった。
|