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2003年03月31日(月) |
hopeless/31日付けの日記について |
少年は、ゲームセンターのすみっこで 誰もやろうとしないゲームを見つけた。
「そのゲーム、つまんないよ。 ぜんぜん勝てないんだもん」
他の少年はそういったけど、 彼はそのゲームの魅力にひかれていった。
たくさんの山や壁を越えて、 廃墟となった城の奥にあるきれいな宝物を 自分の住む村までもってかえるというだけの単純なゲーム。 それなのに、クリアできた人はほとんどいない。 ランキングにはデフォルト以外には名前は記入されていなかった。 でも彼はそのゲームにのめりこむようになり、 彼は何度もそのゲームをするためだけにそこに通うようになった。
ある日少年は気がついた。 微妙だけど壁がだんだん高くなっているし、 敵も最初の時より強くなっていることに。
少年は、店主に尋ねた。
「おじさん、このゲーム、1面の難易度がだんだんあがってるよ」
「ああ、そのゲームはなあ。 自分が認めたやつしかクリアさせないんだよ」
「えっ」
「やつはなあ。自分のことを誰も攻略できないと 信じることで、自分の小さな世界を保っているんだよ。 やつが信じているのはたったそれだけなんだ」
「……」
「クリアできそうになると、レベルをあげて先には進ませないようにする。 それでも先に進もうとすると、罠にかけてひどいエンディングを見せて 二度とやりたくない気分にさせるんだ」
「……」
「このままゲームを続けてもお金の無駄だよ。 今まであれにつぎ込んだコインを返すから、 他のゲームで遊びなさい」
店主はゲーム機のコインを少年に返した。
少年は一度は帰ろうとしたものの、 やっぱりあきらめきれなかった。 これを最後の挑戦にすることに決め、 再びゲーム機にコインを投入した。
すると、最初にやったときよりも難易度が下がっていて、 少年はいともあっさりと宝物のある城までたどりついた。 宝物の箱をあけた少年は、箱の中をみて驚いた。 中はからだった。
他の部屋かもしれないと思ってキーを操作しようとすると、 どこかから「むだだよ」という声がした。
「俺のことがクリアできると思ったのか? 宝物なんて最初からないんだよ。 おまえが何度コインをつぎ込んだところで無駄なんだよ」
少年は、徐々に小さくなっていくゲーム画面から 聞こえてくる邪悪な声を震えながら聞いていた。
「宝物がなきゃゴールにはいきつけない。残念だったな。 おまえはバカみたいだから教えてやるけど、 俺は、おまえにクリアされる気なんてないんだよ」
「……」
「自分なら俺に認めてもらえるとでも思ったのか? お前にそんな価値があるってどこの先生に教わったのかねえ。 さっさと消えろ」
少年は、ふらふらとその場から消え去った。
店主は、ゲーム機に話し掛けた。
「なんてことを。あの子が最後のプレイヤーかもしれないぞ」
「またどこかのバカが夢を見にくるさ。 俺を攻略できるやつなんてどこにもいやしないのに。 あのガキも、さっさと他のゲームに 乗り換えればいいのにトロいやつだ」
少年は、一人だった。 家にも学校にも居場所はなく、 この数年で唯一楽しいと感じたのはあのゲームだけだった。 しかし、少年にはもう楽しいものは何もなくなってしまった。 あるはずの宝物も、どこにもなかった。 夕焼けの空がだんだん暗くなっていくのとほぼ同時に、 彼の心も暗くなっていった。 空と違うのは、彼の心には日の光が差し込むことが もうなかったということだった。
あのゲームがクリアできたら、何かがかわるような気がしてた。 ランキングにのれなくてもいいから、 ゴールが見られるだけでもよかったんだ。 でも、最初からたどりつけないのに ゴールを夢見て、足跡すら残せないものに 僕ははまりこんでいたんだ。
少年は家に帰ることにした。 邪魔にされ、虐待されるだけの家に。
これが僕の現実。 何もかわらない。これからもずっと。
数年たち、少年はあのゲームセンターによった。 そこにはまだあのゲームがおいてあった。 ランキングを確認すると、未だにデータはデフォルトのままで、 新しい名前はなかった。
「かわいそうなやつだな、おまえも」
少年はゲームにはふれようともせず、その場を去っていった。
あの。。。本当にこの日付の日記を 消しちゃったことでメールを何本かいただいたのですが、 私はもうなんとも思ってませんので ご心配なさらないでくださいね。(^^; ここはじめて以来の大量メールでびっくりしました。(笑)
詳細については個別にお返事させていただきますが、 今回、アドバイスや励ましを下さった方々に この場を借りてお礼させていただきます。m(__)m
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