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| 2003年05月01日(木) |
あきらめの目玉焼き/instinct |
「目玉焼きが壊れちゃった」といって僕を見るきみ 卵は十分あるはずなのに、 なぜ作り直そうとしないのだろう? そう思っていると、きみのいつもの言い訳がはじまった
本当に「目玉焼き」を食べさせる気があるのなら 作り直してくれればいい 言い訳している間に新しいのを作れるはず 形が悪くたっていいし、それでも失敗したなら仕方がない
でも、そう言ったところで 何の解決にもならないことはわかってる だから僕は「それでいいよ」と言うしかない
そんなことで怒るのはおかしいだろうか? じゃあ、そんなことで怒らせるきみは おかしくないのか?
きみは今までに何回、 目玉焼きを失敗したか覚えてる? 僕はきみが失敗した数だけきみの言い訳を覚えてる
だけどきみは、また新しい言い訳を 作り出そうとしている 一度だって目玉焼きを 作り直そうとしてくれたことはないのに
愛情の名のもとに強制された承諾と許し きみが一番最後に心からあやまったのは いったい何年前のこと?
でも、どんな言い訳をされても、 作り直す気がないということにはかわりがない だから僕は「それでいいよ」と言うしかない
みんなが驚いている
あの猛獣を見ろよ いつからあんなにおとなしくなったんだ?
あの猛獣のとなりにいるやつを見ろよ まったく恐れている様子が無い なぜ恐れない? なぜ恐れない?
その男は言った
みんなはこいつの牙に騙されてるけど、 こいつはただの子猫だよ
ずっと誰かからミルクを欲しがって なでてもらいたがってたのに この爪と牙をみてみんなふるえあがってた ただそれだけのことだよ
その時、 「子猫」は彼の手をひっかいた
彼等は笑った やっぱりこいつは猛獣だ 猛獣じゃないか
「悪い子だ」
そういうと彼は、また「子猫」をなでた 「子猫」は目を細めて、 気持ちよさそうに横になった
彼は言った
爪は丸まっているし、牙だって脅かす程度の力しかない 今おまえらが見ていたくらいの力で ひっかけば、俺は死んでいた でも、ほんのかすり傷しかないだろ?
彼等は、おそるおそる 眠る「子猫」に震える手を伸ばそうとした すると男は、その手をつっぱねた
致命傷を恐れる限り 猛獣はいつまでたっても猛獣にしか見えない おまえらは猫に見えるものでもなでとけよ
彼は軽蔑のまなざしで彼らを見たあと、 また「子猫」に視線をうつし、 いとおしそうに「子猫」をなではじめた
「子猫」はまた眠り始めた まるで胎内に戻ったかのように 安心して 力をぬいて
こぼれ落ちそうな笑顔のままで
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