ぶつぶつ日記
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2002年01月09日(水) やられっぱなし

最近「川上弘美」さんにやられっぱなしである。
この人は才色兼備な芥川賞受賞作家。
芥川賞作品は、あまりにも結末が抽象的過ぎ、
あまり好きではないのであるが、
何冊か、何編かに完全にやられてしまった。

本好きではあるが、現在人気のある生きている作家の小説はほとんど興味がない。
吉本ばななも両村上も読んだことはあるが、
それ以上読みたいと思わなかったし、
名前を見知っているだけの作家ばかりで、
どうも読もうと言う気が起こってこない。
その中で、この「川上弘美」なる人の本はなぜか読んでみようと思った。
こう言う時の勘は、はずれる心配はまずないのだが、
それにしても、やられ過ぎである、自分。

最初に読んだ本は「センセイの鞄」だった。
昨年最高のレンアイ小説との呼び声も高いが、
想像するような「レンアイ小説」とは全く趣が異なる。
布団の中で読み終わって、暗闇の中で、
泣いた。
悲しい?とはちょっと違う。
感動した?ともなんだか違う。
「やられた」と思った。

この人のレンアイ小説の主人公は、
かなり不器用な、全然おしゃれじゃない、お金持ちでもあまりない、
30代後半の女性が多い。
どう考えても、レンアイをエンジョイするようなタイプでもない彼女達のレンアイは、
ばかばかしく、そして暖かく、そして月並だが、切ない。
切ないけど、清々しい。
それが私を打ちのめす。

年末からすでに、3回以上も川上さんにやられてしまっている。
今週は2回もやられた。
昨日も暗がりの中で、私は泣いた。

読み終わり、枕もとの明かりを消す。
胸がドキドキしてきて、鼻の奥がつーんとしてくる。
寝ようと思って閉じているまぶたの間から、
じわじわっと涙が出てきて、
私はしばらくそのまま涙を流しつづける。
涙が耳にまで届く頃、
「ふー」っと暗闇に大きなため息をつき、
子供のように手のひらでごしごしと涙をぬぐって、
布団を首までしっかり持ち上げて、
私は眠る努力をする。

そして私も、「150年生きたい」と思っていることに、
気が付くのだった。


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