万談館
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2002年09月01日(日) G3外伝  第1話 エウーゴ前夜(2)

「サイド6管制局より通信。メインモニターに映します」
 モニターに眼鏡をかけた男が映る。
「管制局担当官カムラン・ブルームです。貴艦の入港を歓迎します」
 それに対して、艦長席に座っていた男が立ち上がって、正式の敬礼を行う。ただの入港確認に、そこまでする艦長は今までいなかった。
(まるで噂に聞くティターンズだ)
 カムランはそう思ったが、それを口にすることも、表情に出すこともしない。ただ事務的に、
「第622哨戒艦隊旗艦サラミス級SA240032は、Rゲートに向かってください」
「断る」
 艦長は簡単に答えた。まるで『了解』と言うように。
「Rゲートでは担当の、・・・・・・は?」
「Rゲートは有事の時に迅速に行動できない。手前のPゲートに防がれてしまう。哨戒艦隊の指揮官として、Mゲートの変更を要請する」
「しかし・・・・・・、」
 カムランはとっさに画面の外に視線を走らせる。同僚たちが慌ててゲートの確認をしてくれる。それを横目で見ながら、
「港内では、我々管制局の指示に従ってもらうことになっています。それを拒否することは、入港許可が降りない場合がありますが?」
 もちろん、表立って反論することはしない。ただこちらの言い分を言った後で、妥協策を出すのが、カムランの得意な交渉だった。
(今日は運が悪い)
 こんな日は、さっさと仕事を切り上げて、熱いブラックコーヒーでも飲みたいものだ。アルコールの飲めないカムランの、ささやかな楽しみだった。
「そちらの都合は関係ない。我々は地球の、そしてコロニーの平和のためにいるのだ。そちらは我々の協力をすればいいのだ」
「・・・・・・わかりました」
 同僚から渡されたペーパーを確認して、カムランはこの、うるさい客に対応することに決めた。
「Fゲートが空いています。Fゲートでも、よろしいですね?」
「了解。誘導を頼む」
 艦長の言葉に答えず、カムランはモニターをFゲートに移した。Fゲートの誘導官も、今のやりとりはチェックしているはずだ。後はまかせることにしよう。
 カムランは疲れた顔で、席から立ち上がった。

 彼が「キールピーク」の艦長ラハト・アシューカ中佐である。
 彼の頑固さは、ブリッジにいる者の胃に穴を空けるほどで、今までもシオンと意見がぶつかることがあった。

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ラハト・アシューカ中佐
30代前半。ロシア人だが、ナイジェリアで生まれ育った。
独身で、軍人が自分の本分だと思い込んでいる。
シオンにも、連邦軍人としての正しい行動をしてもらおうと考えているが、シオンからすれば、いい迷惑である。


つかさ |MAIL

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