paranoia kiss
    

とても読書量が多い彼だった。

いつもお互いが最近読んだ本で盛り上がった。
彼は仕事のストレスで、
頭の一部分の髪が抜け落ちてしまっていた。
それも、まだらに。

あたしはそんなことを気にせず、
色んな店に出かけた。
ワインの日もあれば、
水割りの日もあり。
気分によって店を使い分けた。

鼻にかける。といった嫌な部分はなく、
珍しくあたしが素直に話を聞ける相手だった。

店ではそんな雰囲気は見せず、
いつも握手だけして帰る彼だった。
そんな彼の転勤が決まった。

お互い、本当は言いたいことがあったけど。
敢えて言わなかった。
彼は、あたしがついてゆく女でないと分かってたんだろう。

悲しいかな、彼の上司が
あたしの職場復帰を未だに待っている。

2006年11月13日(月)



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