通勤時にたびたび同じクルマと遭遇する。そのこと自体はよくある話だし、少し前まではオレは毎朝旧車の青いスカイラインGTRに乗ってる方とすれ違っていたのである。そのスカイラインは抜け道としてオレの家の近くの狭い路地を通っていた。最近出会わなくなったので少し寂しい思いをしている。
最近オレが注目してるのは、オレと同じ方向に走る真っ赤なトヨタ86である。運転してるのはきちんとスーツを着てネクタイをしている紳士である。まあオレも仕事の時はスーツを着るのが普通なのだが、きっとその方は大阪市内で勤務されてるサラリーマンなんだろうか。生野区の林寺2丁目の交差点をオレは左折するが、その86は直進するので隣に並んで停まることもある。もしもオレが昔乗っていた真っ赤なFTOをそのまま今も乗っていれば、その86の方はこちらに目をとめただろう。今のオレの愛車はありふれたSUVだからたぶん気にも留めていないような気がする。
まだFTOに乗っていた頃、発売直後の86とBRZが気になって、スバルの販売店に行って実物を見たことがある。その時にオレは試乗用のBRZの隣にFTOを駐めたのだが、並べて見たときに「どう考えてもFTOの方がカッコいいよな」と思ってしまい、どうしてダサい方にする必要があるのかと結局購入に至らなかった。その後、FTOの後継としてオレはホンダS660を買うことになった訳である。結局4年で手放して、オレは2ドアクーペに乗ることを止めて日和ってしまって今に至るわけなんだが。
オレがクルマ通勤に掛けている時間は片道40〜50分くらいである。毎日の生活の中の1/12くらいはクルマを運転しているわけである。寄り道とかするともっと時間は長くなる。その時間を好きなクルマの中で快適に過ごすということは人生のQOLを上げることにつながるわけだ。
日和ってしまったけど、今のクルマが嫌いなわけではない。ダイハツ・ロッキーというのはコスパにすぐれたクルマであるし、全長4メートル未満なのでフェリーが安いし、排気量が1000cc以下なので税金も安い。車重が1トン以下なのに98PSだから力強い加速感もあり、実用域では全く問題ない。ただ残念なことは街にあふれる兄弟車のライズである。今までの自分のクルマは「他の人が乗ってないマニアックなクルマ」というパターンだった。それがついに大衆迎合になってしまったことが残念なのである。9インチの大きいナビ画面は視力の衰えたオレにはありがたいし、搭載されている純正のパナソニックのナビの賢さには旅行時に大変お世話になっている。もう何も文句の付けようがないのである。ただ「街でよく遭遇する」ことだけが不快なのである。おまえも乗っるじゃないか!と叱られそうである。
トヨタ86に乗るサラリーマン風の方は20年前のオレの姿なのかも知れない。20年前のオレは三菱FTOのMT車に乗っていた。ハイオク仕様で燃費もあまりよくなくて、けっこうガソリン代はかかったが、それでもオレはFTOが好きで、長期の休みの時はドライブ旅行を楽しんだ。石川県の千里浜のなぎさドライブウェイを走ったこともあるし、名古屋でノーマルタイヤなのに突然の豪雪に見舞われて焦ったこともある。保有したクルマの中で一番思い入れの深いクルマである。22万キロ走って手放すことになったが、今のどこかの国で走ってるのだろうか。
オレはその86のドライバーにとても親近感を覚えたのである。きっと運転が大好きな方で、赤いクルマが好きなかつてのオレのような方なんだろうと。
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