(仮)日記
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2008年09月13日(土) おくりびと






全体的に静かで、美しい話でした。

人間の生と死を扱った重いテーマなんですが、前半は軽妙なテンポで進んでます。
納棺師のお仕事、遺体を清める場面から始まるんですけど、これがそう重くない。どちらかというと笑いの方が多いくらいなんですが。
何せ”ついてる”んで(笑)

主人公が元チェロ奏者ということで、全編通してチェロの美しい響きと、久石作曲のテーマ曲が流れてます。
この曲で泣かされる。

死体と初対面、しかも腐乱したなかなかの一品――という場面では、本木の気分の悪さが観客の笑いを誘うというか。まあ慣れないうちは誰でもそうなんでしょうようん。私も大悟と同じく人の死に直面したことはまだない。葬式も出たことない。

余りに酷い遺体とのご対面後、生きている人間の暖かさが身に沁みる。そして広末のギリギリの下腹部(笑)

食べるシーンを敢えて重点的に多く取り入れているのは、生きるための姿勢ってところだろうけど。人間の三大欲のひとつだし、生きる意欲だよなあ。美味しそうに食べてるんですこれが。

小さな子供用のチェロで弾いている場面は、親子の繋がりを表現しているんだろうかと。夢を諦めチェロを手放してすっきりした筈の主人公が、捨てた夢に執着してるって風でもないので。長年の習慣みたいなものだろうけど、少しずつ明かされていく父親とのエピソードがね。

本木の周りを固める役者さんたちが皆いい味出してるんです。
山崎さんはさすがの貫禄で、もうそこにいるだけで滲み出る何か。こんな人に納棺してもらえれば感無量みたいな。や、死んでるから何もわかんないんだろうけど、その作法を見る側の遺族としては。

風呂仲間の笹野さんがこれまた素敵で、後半になってそんなところに出てくるのかよ!って。
頭の固そうな息子役に杉本哲太さんはハマリだし。

私的に山田辰夫さんが凄い良くて!頬のこけた感じが役作りなのか天然なのかちょっと不明だけど、奥さんに先立たれて哀愁漂う雰囲気が似合いすぎ。最後の最後で棺にしがみ付いて男泣きが素晴らしすぎる。この役者さん好きだなあホント。

死者を食い物にしてるイメージで始まる納棺師。何も知らなければそうなんだろうけど。嫌なイメージはあるわな。そんな職業があること自体知らなかった私は特に何も先入観はないんだけど。
その代表としての役割で幼馴染役の哲太さんと妻役の広末で。
母親を納棺するための大悟の仕事振りを見て、そんな封に決め付けて蔑んでいた自分を恥じ、死者の尊厳を敬って扱う大悟を見直していくっていう流れでしょうか。
「夫は納棺師」と断言する妻の台詞はあんなに否定していた大悟の仕事を認め、支えるという点で重要だろうなと。

納棺シーンでの山崎さんと本木の所作が大変美しいです。
そこを強調して撮っているとはわかっていても。

蒸発した父親を納棺する場面でのあの石と、妻の妊娠、腹の子供という点はまあありがちだなとは思う。
綺麗過ぎるくらい綺麗に作られていて、その点が性に合わない人には駄目でしょう。



結論。
遺体役の方々の腹が呼吸で膨らんでないかとか動いてないかとか正直気になりました(笑)






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