2001年10月15日(月) |
伝令 No.3 〜伝令から見える監督の考え〜 |
一週間ほど前の話になるが、、、10月6日高校野球神奈川県秋季大会の準決勝を観戦してきた。桐蔭学園対桐光学園、平塚学園対東海大相模。いずれも、甲子園出場経験のある強豪校だ。 この4チームは、それぞれが「伝令」のスタイルを持っており、試合内容とはまた別に面白いものを見られた気がする。
準決勝第1試合は、桐蔭学園が10対3で桐光学園を下した。桐蔭はこのまま全国に行っても、十分に上位が狙えるほどの力を持っていた。この試合、伝令を送った数は桐蔭が1回、桐光は0回。終始劣勢であった桐光であるが、一度も伝令を使わずに試合を終えた。 先制をしたのは桐蔭。2回表に打者一巡の猛攻で5点を先取した。この間、桐光守備陣には守りの乱れが二度。四球も絡んだ。流れが悪かったのは明らか。だが、ベンチから伝令が送られることはなかった。 桐光を率いる野呂雅之監督は、以前の日記でも書いたがほとんど伝令を出さない。ベンチからキャッチャーに自分の意志を伝えることで、それを補っている。ただし、新チームのときはそうもいかない。準々決勝では3回の伝令を使い切っている。主将であるキャッチャーに対して、「失礼だけど、まだそれほどの信頼がないから、伝えることはしっかりと伝令を送って伝えたかった」と、準々決勝後に監督は話していた。 では、なぜ準決勝の桐蔭学園戦では一度も伝令を送らなかったのか。それは、動きに精彩を欠いた(以前の日記参照)ショートの1年生・上宇都を最後の最後まで代えなかったことと関係していると思う。決して「試合をあきらめた」わけではないが、まだ秋の段階。春、夏と続く戦いのために、経験を積ませたかったと推測する。「旧チームのように伝令を出さなくても、選手がやるべきことを理解できるチームになってほしい」と準々決勝の試合後に言っていたことからも、感じることができる。
一方の桐蔭学園は、大量リードの場面で伝令を送った。場面は、6対0とリードした5回裏の守り。1点を返され、なおツーアウト3塁。バッターは1番という状況でベンチは動いた。 桐蔭を率いるのは、高橋由伸(巨人)や高木大成(西武)らを指導し、自身では高校時代に全国制覇の経験もある土屋恵三郎監督。桐蔭のスタイルはとにかく「基本を大事に」。それは試合前ノックや、選手の打撃フォームを見れば分かる。良い意味でも悪い意味でも、選手みんなが同じような動きをする。 桐蔭を表す言葉を挙げれば、「慎重」「堅実」「緻密」。準々決勝では、1イニングに3スクイズを試みている。言葉は悪いが「いやらしい」野球をする。「野球は何が起こるか分からないから、最後の最後まで手を抜かない」という意識が見ている側に伝わってくるのが桐蔭野球であり、土屋監督の教えである。 もし両チームが逆の立場。つまり、桐光学園が桐蔭学園をリードしていて、上記と同じ状況になったと考えると、桐光はリードしている場面では伝令を送らず、桐蔭は守備のミスが出た時点で伝令を送っていたと思う。 この試合は中盤で大差がついてしまい、勝敗への興味は薄くなってしまったが、伝令に注目することで、面白く試合を見ることが出来た。高校野球独特のルールである「伝令」に視線を寄せれば、試合をもっと興味深く観戦できると思う。
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