2003年08月21日(木) |
中国の影響力について |
さて、先日「世界の海で 魚 を釣りましょう!」 という話をしましたね。
現在、中国 という海が注目を集めています。
Aさん「中国はこれからどんどん発展するよ。 今、中国に投資しておかないと損だよ」
Bさん「なに言ってるんだよ。俺なら投資しないな。 中国はリスクの塊なんだ。
今はいろんな問題が表面化してないだけ。 早晩化けの皮がはがれるよ・・」
皆さんいかがでしょうか・・。
わたしはAさんの言うことも、Bさんの言うことも 「正しくない」と思うのです。
なるほど、 中国の潜在成長力は非常に高いです。
しかし、期待リターンが高いということは、 引き受けるリスクも高いということ・・。
Aさんの言うように、 能天気に中国に投資すべきではありません。
Bさんの言うところの「リスクの塊」を細かく砕いて、 できるだけその内実を把握するようにすべきです。
そして(つまり、潜在リスクを十分理解しながら) 淡々と投資を行うのです。
◆ リスクの大きさを認識しつつ、お金を託す。 これが 資産運用 です。
さて、 中国という国はたいへん興味深いです。
一見矛盾することを、何事もないように 同時進行させています。例えば、
● お金儲けの経済(資本主義) と 皆平等のイデオロギー(共産主義)
● 規制堅持 と 規制緩和 ● 情報開示 と 情報統制
要するに“ホンネと建前”の 使い分けがうまいのですね。 (オトナというか、現実的というか・・)
先日テレビを見ていて、 「中国がオーストラリアと FTAの条約締結に向けて 交渉を開始することに合意」
というニュースが目に入りました。
FTA とは Free Trade Agreement、 つまり【自由貿易協定】です。
【自由貿易協定】と云うとなんだか 大げさに聞こえますが、要するに
「お互いナチュラルな形で 貿易・投資 をしましょう」という意味です。
中国は当面『輸出産業』を主要エンジンとして、 高度成長を維持させたい意向です。
そのためには、中国の製品・サービスを できるだけ負荷のない形で世界に広めたいのです。
ところで、貿易 といえば 「山彦さん・海彦さんの話」にさかのぼります。
山彦さんは山に住む人で、 そこでは 木材や山菜 が豊富です。
海彦さんは海辺に住む人で、 そこでは 魚・海草など が豊富です。
お互いの効率性を考えて、
「じゃあ山菜ひと盛りと、 海草ひと盛りを交換(貿易)しましょうや!」
というのがコトの始まりなのです。
交換(貿易)するのに、税金をかけさせてくれ (関税という)というのは、 ほんとうはつい最近の話なのですね。
山彦さん・海彦さんをそれぞれ 「国」と捉えれば、自由な貿易 は双方に
「マーケットの拡大」と「企業収益の増加」 をもたらすはずです。
さて、「中国は自国の製品をできるだけ 負荷のない形で世界に広めたいのです」と言いましたが、
FTAが発効になれば、 海外からの 製品・サービス も負荷なく 中国国内のマーケットに入ってくるのです。
< 国内企業 にとっては脅威に違いありません >
しかし中国は現在、ASEAN(東南アジア諸国連合)との 包括的なFTA締結 に向けてまい進しています。 (10年内の締結を目指しています・・)
Far Eastern Economic REVIEW 7月17日号 によれば、
・中国は2004年1月からアセアン諸国に対して 農産物関税の引下げを実施する予定。
・また、2006年までにアセアン主要6カ国に対して 600品目の関税を撤廃する予定。
(特に タイ とは今年中に 200品目の関税を相互に撤廃する予定)
すごいと思いませんか?
このニュースは日本でもっと大々的に 報じられるべきだと思います。
中国がこれほどまでにアセアン諸国との FTA締結にこだわるのは、
東アジア経済圏において 「主導権」を握りたいからです(影響力を強くしたい・・)
中国のアセアン諸国に 対するメッセージは明快・・。
「中国は WTO(世界貿易機関)との 市場開放の約束 に先がけて、
ASEAN諸国との 貿易・投資の障壁 を 取り払いたいのです。 共に繁栄しましょう!」
小異、小トラブル は黙認する。 大同 を取る。
(中長期的に見れば、己の利益となることを 中国はよく知っているのです)
オトナというか、現実的というか・・。
えっ、日本 ですか?
日本はこれまでシンガポールと FTA を締結できたのみ、です。
わたしは「中国版グリーンカード」が 創設された時も驚きましたが、
かの国は
「19歳の青年の如く振舞うかと思えば、 70歳の老師のような大局観を指し示す・・」
ほんと、興味深い国 です。
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