2004年07月14日(水) |
【コートダジュールの保養地の悪質運転手に興ざめ・・南仏海岸】 |
ニース、モナコ、エズ、カンヌ、サン・ポール、
2000年6月26〜7月11日
大学時代のボート部の友人達5人と一緒にイギリスのヘンリ・オン・テームズで開催されるヴェテラン・レガッタに参加した。現地入りする前に南仏のコート・ダジュールへ立ち寄り、ニース、モナコ、エズ、カンヌ、サン・ポールの保養地や観光地を駆け足で観光した。 大きな荷物はロンドンのホテルに預けてきてはいるものの、初めての土地で道不案内なので空港からタクシーでホテルまでいくことにし大型車を探したが見当たらない。タクシー乗り場で五人だというと二台でなければ駄目だといわれた。近い距離で荷物も小さいのだから五人を一台に乗せろと交渉しても受け付けようとしない。
しかたなく値段を聞くとホテルまで一台150フランだという。邦貨に換算すると約2500円である。予め見当をつけておいたホテルまでの距離からすると高い気がするが、初めてのことなので距離感が働かない。なにはともあれ二台に分乗してラジソン・ホテルへ向かった。ニースの海岸沿いに走っている道路を十分も走行したかと思うまもなく目的のホテルへ到着した。
走行中運転手はメーターを作動させようとしない。ニースのタクシーには悪質な運転手が多いという予備知識がなかったので、値段を予め決めてからの乗車だからなのであろうと単純に思っていた。ところが、ホテルへ到着してから現地旅行社の担当者等に事情を聞いてみると適正料金の約三倍を払わされていることが判った。
旅の第一印象として不快な思いをさせられたので、以後ニースではタクシーに乗るのをわずわらしく感じるようになってしまった。
ここでニース滞在中に体験したタクシー事情をまとめてみると、ニースのタクシー運転手は悪質な雲助が多いということである。従って対策としては、
先ず乗る前にメーターがついているタクシーかどうかを確かめなければならない。
次にメーターで走行してくれるのかを確認しなければならない。メーターは使わないと言うのであれば、目的地まで幾らで連れていってくれるのか値段の交渉をしなければならない。予め値段を決めておかないと、目的地へ着いてから何十倍という法外な料金を請求されても抗弁のしようがなくなるからである。
しかも、乗客側に距離感がないうえ、運転手の使う言葉がフランス語なのでよく判らないため,相手のいいなりの値段になってしまうケースが多くなる。
更にメーターで走行すると言った場合でも注意していないと走行中メーターを操作して数字をはね上げるような悪質なことまで行う運転手が蔓延しているのである。
我々も滞在三日間には町中を徒歩で歩いたり市バスに乗ったりと経験を積んで、距離感が判るようになってくるので、運転手の請求する金額が適正なものかふっかけたものかおよその見当がつくようになる。メーターに手加減を加えず、表示通りの適正な運賃を請求するまともな運転手も勿論いるからそのような時には気持ちよくチップもはずむことになる。しかし運転中、何度もメーターに手を触れる運転手には注意が必要である。必ずメーターを操作しているのである。しかし、その不正を咎めることは極めて難しい。そこでせめてもの抵抗としてチップを払わないことで対抗するしかない。
実際に経験したのであるが、夕食を終えてからの帰りにメーター付きのタクシーに乗ったら、この運転手はメーターに何度も手を触れている。ホテルについて料金をみると行きに乗ったときの料金50フランよりも六割方高い金額八十フランが表示されている。そこで「ノン」と相手の請求を拒否して行きと同じ料金しか出さなかったら受け取ろうとしない。しばらく押し問答が続いたが運転手は乗客を下ろさないで、やおら車を走りださせてしまった。
どこへ連れていかれるか判らない。この時は四人一緒であったが言葉のままならない不案内の土地故、不安になったので百フラン紙幣を渡した。すると右手に握りしめていた汗まみれの十フランコイン二枚を釣り銭として我々に手渡すと、下車を急かせて慌ただしく車を発進させて暗闇へ消えて行った。
この運転手などは多少、心にやましいものを感じている気の小さい運転手で、騒ぎが表沙汰になったら営業免許取り消し等の処分を受けるのを恐れている様子がありありと窺われた。周囲の者がやっているから自分もしなければ馬鹿をみるという大勢随順型のどこにでも見られる人間類型である。それにしても行政当局が徹底的に取り締まりを強化してこのような悪質タクシー運転手を駆逐しなければニースという世界の名勝地の名に恥ずかしいのではなかろうか。それともこのような現象はラテン系民族のちゃらんぼらんな国民性の表れと見るべきなのだろうか。
荷物を部屋へ置いて取り敢えず、ニース市内を歩いてみることにした。海岸通りには椰子が植えられており幅広い歩道には、ジョッギングしたり、散歩したりしている人々の群れが絶えない。空が白みだすと早朝から散歩する人々の姿がみかけられる。
海岸通りを歩いてみると白い砂浜

には水着姿で日光浴をする老若男女があふれている。欧州北部地方の日照時間の少ない地方の観光客達が太陽の強い陽射しを求めて、ビタミンDの補給にきているのであろうか。海に入って泳ぐでもなくただひたすら砂浜に寝ころんで肌を焼いているのである。世界屈指の南仏のリゾート地の光景を楽しみながらちょっとばかり裕福な気分になりしばしの散策を楽しんだ。空は青く晴れ渡っており、太陽の光を一杯に受けて地中海は紺碧色に美しくに輝いていた。陽射しを直接肌に受けるが空気が乾燥しているせいか歩いていても不思議にあまり汗をかかない。
散歩の途中見かけたニース最高級のホテル・ネグレスコ

に入り、メリーゴーランドのあるカフェでビールを飲みリッチな気分にしばし浸った。この後ニース市内を気の向くままに歩き廻った。カジノという看板をだしたスーパーストアもニースならではの愛嬌である。夕食にはこの地で有名なレストラン「ボッカチオ」で海鮮料理に舌鼓を打ち白ワインで杯を重ねた。ムール貝が印象に残る味であった。
翌朝九時に予約しておいた男性の日本人ガイドが迎えにきた。ガイド兼運転手である。出身地は徳島県で、大学を卒業して間もなく県の交換留学生としてこの地に留学したがそのまま居ついてフランス人女性と結婚した。趣味はカジノだという。小さな旅行会社を友人と経営しているらしいが、忙しい人である。自動車の運転中も携帯電話で頻繁に事務所と連絡をとりあっている。何でもシーズンを迎えて多忙なところに係員の一人が生牡蠣を食べて食中毒にかかり入院したためその皺寄せがきた上に、初老の夫婦連れのお客の夫の方がバイオグラを服用して急死するというアクシデントが重なったのだと言い訳していた。
午前中はコート・ダジュール(紺碧の海岸)をモナコへ向けてドライブした。砂浜には太陽に肌を焼いている水着姿の人々が寝そべっている。中にはトップレスの水着を纏い見事な乳房を誇示している若い女性も散見される。海水の流れが速いらしく水泳をしている人は殆どいない。モナコへ向かう途中小高く登った道路の遙か下方の崖下の岩場にヌーディスト達の集まる場所があると説明を受けたが障害物に視界を妨げられて現場を垣間見ることはできなかった。そうこうする内にモンテカルロ

を一望のもとに見渡せる地点を通って、車はモナコ国の領内に入りモナコ大公宮殿前広場に到着した。

モナコは総面積が二km2しかない人口3万人の小さな都市だが独立国家である。歴史はフェニキヤ時代に始まり、中世以降に栄えた風光明媚で国際的な保養地である。宮殿前では白い制服を身に纏った衛兵が剣付き銃を肩に担いで門前の一定区間を繰り返し往復警邏していた。
宮殿の近くにある教会の中には自動車事故死した往年の名女優で王妃となった故グレース・ケリーの墓があり、墓標にはグレイシア・パトリシア
の名前が刻まれ観光客が供えたのか生花が供えられていた。
宮殿のある地域が旧市街で、高層ホテルの林立する地域はモンテカルロと呼ばれている。モンテカルロにある大カジノ

の建物は豪華な造りで見学者で満ちあふれていた。なにしろ公設賭博の収益と間接税で国家財政の過半を維持している所得税のない国である。宮殿よりも贅を尽くして豪華に見える建物の存在もうべなるかなである。
モナコを後にして城砦の村エズ

へ立ち寄った。ニースを攻撃するための城砦として中世に建設されたものがそのまま残り、村として現在も機能している。ここにはサボテンの植物園が営まれておりモナコやニースを一望のもとに見下ろすことができるロケーションである。
午前中の観光を終わり、再びニースへ戻ってエスキナードというレストランで海鮮スパケッティを食べたら蛸や烏賊や海老がふんだんに使われていてとても美味しいと思った。
午後からはカンヌ

と城郭都市サンポールを観光した。カンヌの映画祭の時使われる建物の前の広場にはここを訪れた映画俳優達の手形がタイルに型とられており、ロスアンジェルスのチャイナシアターと同じ趣向が凝らされていた。そして前面に広がる海浜ではニースと同じように水着姿の人々が日光浴を楽しんでいた。この海岸の近くにはナポレオン・ポナパルトがエルバ島を脱出してから捲土重来を期すべく上陸した地点があり、記念碑が建っていた。
サン・ポール

もエズ同様に小高い山に築かれた城砦がそのまま町として現在に残って観光地として栄えているのである。
夕食にはニースの旧市内にあるターブルドシヌという中華レストランで中華料理を堪能し久し振りに紹興酒を飲んだ。華僑の女将の如才ない愛嬌のある応対に東洋人として相通ずる人情の機微を感じた。
ニースも滞在三日目ともなると市内の地理も頭に入ったので、市バスに乗って有名な花の朝市

見学に行った。色とりどりの花が売られていて楽しい風景である。果物、野菜や魚介類も売られておりトマトを買って食べたら自然の素朴な味がした。この後、有名な「シャガール美術館」へ市場から歩いていて行った。旧約聖書に題材をとった色彩感覚豊かな作品が多数展示されており名作を前にしてしばし忘我の境界を彷徨った。
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