2005年10月14日(金) |
縁日の金魚鉢 8−2 |
京浜銀行横浜支店のお客が早坂の追突事故のあと続けて二件、同じような手口で盗難にあったことが、新聞に大々的に報道されたとき、早坂はまずいことになったなと思ったものである。犯人が味をしめて第三(早坂の事件を入れれば第四の)事件を起こしてくれなければいいがと願っていた。警戒も厳重になるだろうし、もし犯人が捕まれば,取り調べの過程で早坂からも、300万円盗んだことを自白しないとも限らない。そうすると早坂も取り調べを受けることになるだろう。300万円も盗まれながら何故盗難届けを出さなかったか、当然追求されるだろう。追求されると金の出所まで遡って調べられるに違いない。あれだけ新聞を賑わせた事件だから、税務署の耳にも入ることになるだろう。税務署に脱税容疑で徹底的に調べられたら今日まで営々として蓄積してきた財産は根こそぎもっていかれるだろうし、会社が倒産の憂き目をみることになりかねない。
早坂は被害者でありながら、犯人の行方不明と不逮捕を願うという奇妙な心理状態になっていたのである。 早坂は直通電話の番号を教えてから、電話が鳴るのを待っていた。ところが電話は一向にかかってこない。当然すぐかかってくる筈の電話がかかってこないので不安になった。 『犯人は何故電話をかけてきたのだろう。車の持ち主が私だということがどうして判ったのだろうか・・・・・・・車の登録番号を調べれば、持ち主は判るな』 早坂は目を瞑って対策を考えながら自問自答を始めた。 『被害者のところへ電話をかけてきたりしたら危険ではないか。それを敢えてしてきたところをみると何か魂胆があるに違いない。相談したいことがあると言っていた。ゆするつもりかな。とすれば、あの金の性質を知っているのだろうか。いや、そんな筈はない。あの日、私が無記名の定期預金を解約したことを知っているのは、横山支店長だけだ。金を盗られたことは、横山支店長にも話していない。横山支店長が警察に取り調べられたとき、心配して知らせに来てくれたが、金はとられていないと念を押しておいた。彼だってサラリーマンだから、自分自身は可愛い筈だ。彼の口から秘密が洩れることはあるまい。新聞に似たような手口の事件が二つも派手に報道されたから私の車の盗難事件を聞いた者が嫌がらせの電話をかけてきたのだろうか。だが、嫌がらせの電話なら、直通電話の番号を教えろという筈がない。最初電話の応対をした木山みどりの盗聴を警戒しているのかもしれない。とすればゆすりかな』
早坂はその日予定されていたロータリークラブの会合への出席を、頭痛を口実にして取りやめ、得体のしれない電話がかかってくるのを待つことにした。ロータリークラブへ断りの電話を入れるよう命じられた木山みどりが復命にきたのをつかまえて、 「木山君、さっきの山本太郎というのは保険会社の調査員だったよ。この前の事故の状況について詳しく知りたいことがあるから教えてくれということだ。用件を最初から言えばよいのに変な奴だよ。今度山本太郎から電話があったら廻してくれ」と言った。 「かしこまりました」木山みどりは素直に返事をした。その返事からは、山本太郎からの電話に好奇心を持っている様子は窺われなかった。
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